Research Abstract |
本研究の目的は,数理生態学の一分野である人口動態論に由来する非線形楕円型偏微分方程式を考察することにある.この方程式の特徴は反応項にロジスティックタイプの非線形項が現れることである.滑らかな有界領域において従来の斉次線形境界条件,すなわちノイマン境界条件,ロバン境界条件を一般化して,正値解の存在,一意性,多重性,及び物理量を表すパラメータに関する漸近挙動を調べた. 1.まず,ノイマン型境界条件のべき関数型の非線形摂動を表す非線形境界条件のもとで,正値解のパラメータに関する非存在定理の確立を目指した.部分的な結果を次の2つの研究集会において発表した:Nonlinear Elliptic and parabolic Problems : A Special Tribute to the Work of Herbert Amann(チューリッヒ大学数学教室,スイス),平成16年6月;数理科学セミナー(茨城大学教育学部),平成16年7月.前者の会議録への掲載を求め,得られた結果を論文にまとめ投稿,現在査読中である. 2.平行して,係数が非負値であるロバン境界条件を一般化して,変数係数が符号変化する場合について考察した.最初に,線形固有値問題の主固有値の変分的特徴付けを行い,その応用として,優解劣解を構成する方法を用いることによって,反応項がロジスティックタイプである非線形楕円型境界値問題の正値解に対する一意存在定理を得た.現在,この結果をまとめた論文は投稿準備中である. 3.さらに,ロジスティック項を含む劣線形型の非線形項に対する正値解の分岐曲線を考察して,その折り返し点の特徴付けを試みた.非線形理論の一つである写像度の理論を援用してこの研究を進めた.研究経過報告を平成17年3月の日本数学会年会函数方程式論分科会にて行った.この研究成果及び手法は,本研究の来年度の計画にある,正値解の安定性の研究につながる重要なステップであると考える.
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