2005 Fiscal Year Annual Research Report
核子-原子核散乱に基づいた安定・不安定原子核の中性子密度分布決定に関する研究
Project/Area Number |
16540240
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
嘉規 香織 静岡大学, 理学部, 助教授 (50242756)
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Keywords | 不安定原子核 / 相対論的インパルス近似 / 相対論的平均場近似 / 陽子-原子核弾性散乱 |
Research Abstract |
計算の信頼性を高めるために,前方のanalyzing powerの再現性の問題を解決しなければならない.入射する陽子のエネルギーが200MeVより小さくなると,計算と実験データの差が顕著に現れるので,50-200MeVのエネルギー領域で陽子-原子核弾性散乱の実験データ(散乱微分断面積とanalyzing power)がある標的原子核58Niや40Caについて,NN散乱振幅のバリエーション(IA1,IA2)や媒質効果を考慮した有効相互作用(相対論的,非相対論的)を用いて計算を行った.この問題に関しては,現在,結果の解析中である. CaのアイソトープについてA=40を大きく超えるA=60-74の原子核に対してRMFT(Relativistic Mean Filed Theory)による核子の密度分布が得られており,これらを標的とした陽子-原子核弾性散乱の観測量の計算をRIA(Relativistic Impulse Approximation)に基づいて行った.途中経過を,「Hawaii 2005 Second Joint Meeting of The Nuclear Physics Division of The APA and JPS」において口頭発表した.この計算においては,前方でのanalyzing powerが問題とならない様に,陽子の入射エネルギーは300MeVに選んである.この種の原子核で興味深いのは,陽子の密度分布と中性子の密度分布の大きな違いが期待されることである.近い将来これらのCaアイソトープに対する実験が行われれば,それらの実験値と比較して陽子密度分布とは大きく異なる中性子分布の様子や,208Pbではあまり顕著には現れていない中性子スキン等の様子が明らかにされると期待できる. 208Pbの中性子密度分布に関するこれまでの解析から,RMFTに依る結果は,弾性散乱実験から得られる密度分布より中性子が外側に広がっている傾向があることが明らかになってきている.RIAによる解析においても,傾向としては現れていたが,300-400MeVのNN振幅の適正化によって,より信頼性の高い結果を得られるように,現在解析を行っている.これまでの計算からは,RMFTに対して,中性子密度をよりコンパクトに与えるように修正を示唆する結果が得られると期待される.
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