2005 Fiscal Year Annual Research Report
電子蓄積リングからの高エネルギー電子ビームの選択的な取出しメカニズムの研究
Project/Area Number |
16540245
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
白井 敏之 京都大学, 化学研究所, 助手 (50252507)
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Keywords | 電子ビーム / ストレッチャー / ビーム取り出し / 加速器 |
Research Abstract |
本研究の目的は、京都大学化学研究所に設置されている電子リングKSRをもちいて、パルスストレッチャーリングと高周波電場によるビームキッカーを組み合わせて、1秒当たり1個の電子から、10^3、10^6、10^9電子/秒というような任意のビームレートで、リングから連続的に高エネルギー電子を取り出す技術を開発するものである。 去年度は残留ガスとの散乱をもちいてビームを取り出す方法の開発をおこなった。今年度はそれに続いて、水平方向にビームを蹴る高周波キッカーをリングに導入し、それに水平方向ベータトロン振動数に近い周波数の高周波を印加することによって、取り出しビームを制御することをこころみた。 この結果、高周波の周波数、強度、位相を制御することにより、シミュレーションでの計算通り、10^3、10^6、10^9電子/秒などの任意のビームレートで60MeVの電子を取り出すことができるようになった。取り出したビームプロファイルについても、リング内電子のサイズと、取り出し口にあるBeフォイルによる散乱から予想されるものと矛盾がないことがわかった。 これらの成果を受けて、高エネルギー実験グループと共同で、エアロジェルカウンタや、高ビームレート用ワイヤーチェンバーの開発実験をおこなっている。これらビーム取り出しに関する成果は、まもなく論文で公表される予定である。 ただ、高いビームレートの実験は非常にうまくいっているが、低いビームレートにおいては、ビーム不安定性の問題が影響することがわかってきた。低いビームレートでは数10分にわたって、ビームを入射することなく、電子を実験コースに供給することができるが、低い電流であっても、ビーム不安定性がときおり起こり、その際には瞬間的にバースト状のビームが取り出される。この低い電流での不安定性の原因の解明と対策が今後の課題である。
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