2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540246
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
巽 敏隆 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40155099)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 智幸 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (50318391)
|
Keywords | クォーク物質 / 一次相転移 / 強磁性 / Fermi液体 / コンパクト星 / 荷電遮蔽 / 混合相 |
Research Abstract |
本年度の大きな成果として次の二点がある。(1)クォーク物質の磁性に関する研究の現状を総合報告にまとめた。Nova出版から刊行予定である。また国際会議において報告を行った。磁性をさらに理解するためにFermi液体理論の適用を試みた。Fermi液体理論はFermi面上の粒子に注目して非摂動的効果を取り込むことができるので、Fermi面の不安定性による相転移を考察するのに適している方法である。相対論的形式とくにスピン依存相互作用に対してはこれまでに研究がなく、ゲージ理論(QCD)に基ずいて常磁性状態でのクォーク物質の帯磁率を導出する試みを行った。その結果、一グルオン交換によるクォークの自己エネルギーは発散を含むが、分布関数の変化による相互作用の変化項にも同様の発散を含み両者は相殺して最終的には有限の帯磁率を与えることを示した。帯磁率はある臨界密度で発散し、強磁性相転移を示し、低密度側で強磁性相が出現することがわかった。この結果は以前の摂動論による系の全エネルギー計算からの臨界密度と同程度である。また、簡単な零レンジの有効相互作用による帯磁率を計算すると、高密度側に強磁性が現れ、定性的に全く反対の様相を示すことがわかった。これらの結果はクォーク間の相互作用の特徴がクォーク物質の磁性に重要な役割を果たしていることを示している。一部の結果は国際会議で発表した。(2)ハドロン物質中での一次相転移と混合相の問題に関して、低密度での液-気相転移、高密度でのK中間子凝縮およびクォーク相への非閉じ込め転移に対する包括的研究を完成させ論文に発表した。これらの研究により個々の相転移に特徴的なふるまいを明らかにするとともに、それらによらない一般的、基本的認識を得た。混合相ではクーロン相互作用とくにこれまであまり考えられてこなかった荷電遮蔽効果が特徴的であり、その結果混合相の存在領域は大きく制限されることを見た。これらの研究の総括的論文を現在準備中である。
|
Research Products
(6 results)