2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若松 正志 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40135653)
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Keywords | 核子のスピン構造関数 / 核子スピンの謎 / 一般化パートン分布 / カイラル対称性 / カイラル・ソリトン / 核子の異常磁気能率 / 核子の電磁形状因子 / 深部非弾性散乱 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は深部仮想コンプトン散乱や深部仮想中間子生成反応等の高エネルギー過程を通じて測定できると期待される核子の一般化パートン分布の理論的解析により、核子スピンの謎と呼ばれるハドロン物理最大の謎の一つを解明することである。ここで中心的な役割を果たすのが、2つの非偏極一般化パートン分布関数HとEという量である。核子スピンの謎の解明に必要なJiの角運動量和則に現れるのはこれらの2つの一般化パートン分布関数の和の前方極限で、それは通常のBjorken変数xの関数である。カイラル・クォーク・ソリトン模型の本質的な長所である無限のディラックの海クォークの効果を取り入れつつ、この量を計算するのは非常に困難な仕事であったが、私達はこの量のアイソベクトル部分の計算にようやく成功し、論文にまとめることができた。模型の予言を手短にまとめると以下の通りである。核子の芯となる3個の価クォークのこの分布への寄与は予想通りBjorken変数xが1/3の近傍にピークを持つ。一方、ディラックの海クォークの寄与は小さなxの領域で価クォークの寄与を凌駕し、x=0の周りに鋭く高いピークを持つ。ここで重要な事実は、私たちが求めた分布の1次のモーメント、すなわち、それをxで積分した量は核子のアイソベクトル磁気能率を与えることである。つまり、私達が求めた分布は核子の磁気能率の(座標空間ではなく)Bjorken運動量変数xの空間での分布を与えるのである。したがって、この分布のx=0の周りの鋭いピークは、縦方向にはほとんど止まっているクォークや反クォークが核子の磁気能率に大きな寄与を与えることを意味している。このことは、逆にクォーク・反クォークの横方向の運動、横方向の拡がりの重要性を示唆するものと解釈される。もし、Bjorken変数xだけでなく、パートンの横方向の空間座標にも依存する衝突係数パートン分布というより一般的な量が、理論または実験から引き出せれば上で述べた物理的な描像の裏付けが得られると期待される。
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Research Products
(4 results)