2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540253
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若松 正志 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教授 (40135653)
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Keywords | 核子のスピン構造 / 核子スピンの謎 / 一般化パートン分布 / カイラル対称性 / カイラル・ソリトン / 核子の異常磁気能率 / 核子の重力形状因子 / 深部非弾性散乱 |
Research Abstract |
本年度の主な研究目的は、核子の一般化パートン分布のモーメントとして定義される一般化形状因子を調べることであった。最低次のモーメントである電磁形状因子を除けば、高次の一般化形状因子は、実験的には全く未知の量である。中でも、2次のモーメントとして得られる形状因子は、核子中でクォークやグルオンが運ぶエネルギー運動量密度などの非常に興味深い情報を含む物理量である。私達は、QCDの有効模型であるカイラル・クォーク・ソリトン模型の枠組みでこれらの量を解析し、格子ゲージ理論の予言と詳細な比較を行った。これにより、パイ中間子の質量が700MeVから900MeVの重いパイ中間子領域でなされた格子ゲージ理論の予言は、カイラル対称性がよい対称性である現実の世界の予言とみなすには問題が多いことを明らかにした。 一方、重陽子のスピン依存構造関数の精密測定が、最近、CERNのCOMPASS groupとHamburgのHERMES groupにより相次いで報告された。新しいデータは、特にxの小さな領域で精度が著しく改善され、また同じ領域で以前の実験データからのずれが認められた。この新しいデータは数年前に、私達が与えた理論的予言に非常に近いことがわかった。彼らはさらに、新しいデータを採り入れたQCD解析を実行し、核子中のクォーク・スピン・コンテンツの値を引き出した。この解析で引き出された値は、以前の値に比べると、誤差が著しく小さくなり、また中心値が少し大きくなったのが特徴である。この新しい観測値は、私達が与えていた予言とほとんど完壁に一致する。これを、核子中のグルオン偏極はかなり小さいことを示唆するCOMPASS groupやBNLのSTAR Collaborationの報告と合わせると、私達が強く主張してきた核子のスピンに果たすクォークの軌道角運動量の重要な役割が確認されるのも間近なことと期待される。
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Research Products
(4 results)