2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540281
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安藤 恒也 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (90011725)
|
Keywords | カーボンナノチューブ / コンダクタンス / 非弾性散乱 / キャップ / 有効質量近似 / 完全透過 / ニュートリノ / トポロジー |
Research Abstract |
カーボンナノチューブは半径ナノメートル程度の2次元グラファイトを丸めて得られる天然の量子細線である.ナノチューブは,(1)通常の量子細線とはトポロジカルに異ること,(2)2次元グラファイト上で電子が自由電子とは非常に異なった運動をすること,のために非常に興味深い性質を示す.実際,有効質量近似では電子の運動はニュートリノに対する2行2列のWeylの方程式で記述される.ただし,円筒を一周したときに波動関数にはナノチューブの螺旋構造により決まる余分の位相がつき,その結果ナノチューブが1次元金属になるか半導体になるのかが決まる.この研究では,カーボンナノチューブや新しいナノチューブ物質の興味深い特異な伝導現象と光応答を理論的に解明し予言することを目的とする.本年度に行った研究は以下のようにまとめられる. 本研究で理論的に明らかにしたい課題は,(1)金属的なナノチューブに存在する完全透過チャネルの及ぼす効果,(2)多層ナノチューブの層間相互作用の効果,(3)ナノチューブ先端の電子状態特にトポロジカル欠陥に伴う局在状態,(4)バンド構造に対する多体効果と光スペクトルに対すう励起子効果,である.本年度はこれらの課題の中で以下のような研究を行い,重要な知見を得た. [1]有効質量近似のWeylの方程式をもとに,ナノチューブの対称性がシンプレクテック,ユニタリー,直交の三種類の間で,アハラノフ-ボーム磁束,谷間散乱,バンドの非等方性により移り変わることを示す理論的研究を行った.これらの対称性の変化が後方散乱の消失と完全伝導チャネルに及ぼす効果を理論的に明らかにすることを目的として弱局在補正の計算なども行った. [2]半導体ナノチューブの励起子の微細構造とそれに対するアハラノフ-ボーム磁束の効果を理論的に明らかにし,アハラノフ-ボーム効果の実験的観測結果の理解に貢献した. [3]多層ナノチューブの層間相互作用が結合の準周期性のために互いに相殺しほとんど存在しないことを示した.
|
Research Products
(6 results)