2004 Fiscal Year Annual Research Report
A_2BX_4型ハロゲン化合物の統一的理解に関する研究
Project/Area Number |
16540293
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
清水 文直 いわき明星大学, 理工学部, 助教授 (20206212)
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Keywords | Tl2ZnCl4 / K2ZnCl4 / Cs2MnI4 / Cs2MnBr4 / β-K2SO4構造 / Sr2GeS4構造 / α-β相転移 / 強誘電性 |
Research Abstract |
(1)Tl_2ZnCl_4の結晶をブリッジマン法により育成し、確かにα-β相転移に対応する異常が存在することがわかった。処女試料をDTAで測定すると、340K付近に比較的大きな熱異常が観測される。十分加熱したあとに冷却すると、今度は最初に見られた熱異常が現れない。これはα-β相転移点以上のβ状態が低温側まで過冷却されたと考えれば説明がつく。また、この340K付近の異常を、誘電率の測定を行うと、少々湿気の影響を免れないが、340K付近に誘電率の跳びが測定される。十分加熱したあとに冷却過程を測定していくと、最初の誘電率の温度依存性とは異なり、今度は340Kの異常は現れずに、1994年にわれわれが報告した結果と類似した誘電率の温度依存性が測定された。これはβ状態(β-K_2SO_4構造をとる)での誘電率の温度依存性に相当するものである。以上、これらの実験結果は、Tl_2ZnCl_4には340K付近にα-β相転移が存在することを支持していることに他ならない。この研究成果は2004年第5回日韓強誘電体会議(於:ソウル)で報告した。 (2)室温でβ-K_2SO_4型構造をとるCs_2MnI_4には三つの相転移が存在する、ということがZandbergeらによって報告されていた。そこでCs_2MnI_4の単結晶をブリッジマン法で育成し、三つの軸方向におけるそれぞれの誘電率の温度依存性を測定し明らかにした。この結果から、b軸方向の誘電率の変化が一番大きく、次にa軸、c軸の順となり、これまでのβ-K_2SO_4型構造をとる他のCs塩ともよく一致していることが分かった。次にCs_2MnBr_4の結晶を育成したが、単結晶は得られていない。偏光顕微鏡観察下では一様に消光するようなb板は得られていない。劈開面に垂直な方向と劈開面に平行な方向の2方向の誘電率の温度依存性を測定した結果、二つの相転移に対応する誘電異常を見出すことができた。また、ハロゲンサイトのヨウ素から臭素への置換効果として、転移点が低温側にシフトする傾向がわかり、この結果はこれまでのこの系統の物質群における経験則と一致していることがわかった。この研究成果の一部は日本物理学会2004年秋季大会(於:青森大学)で報告済みである。 (3)強誘電体K_2ZnCl_4の単結晶を水溶液蒸発法で育成し、α-β相転移が存在するかどうかの吟味を行った。比較的大きく成長した結晶ではα-β相転移の存在を示唆するような結果は得られなかったが、ビーカ中で析出したばかりの小さな単結晶では、DTAにおいてα-β相転移に対応するような大きな熱異常を観測することができた。またDTAと誘電率の温度依存性から250K付近にこれまでに報告されていない新たな相転移の存在する可能性がわかった。この研究成果の一部は日本物理学会2004年秋季大会(於:青森大学)で報告している。
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Research Products
(1 results)