2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540294
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
河原林 透 東邦大学, 理学部, 助教授 (90251488)
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Keywords | 磁気輸送現象 / 2次元ランダム磁場 / ランダウアー公式 / シュブニコフ-ド・ハース効果 / 量子ホール転移 / 臨界コンダクタンスの分布 |
Research Abstract |
2次元ランダム磁場の系におけるコンダクタンスの統計的な性質を数値的に調べた。このランダム磁場の系は、電子相関の効果が重要である分数量子ホール系と平均場近似の範囲内で同等であることが知られており、これまで精力的に研究されてきた。昨年度は、ランダム磁場の揺らぎとその平均値が同じ程度の系において、弱磁場極限でのコンダクタンスにシュブニコフ-ド・ハース効果など興味深い性質が表れることを示した。今年度はこうした成果を踏まえ、よりこの現象に対する理解を深めるために、平均磁場がランダム磁場の振幅よりも大きな場合について、コンダクタンスの統計的な性質を数値的に調べた。その結果、ランダム磁場の振幅が相対的に弱くなるにつれ、コンダクタンスの値はコンダクタンス量子(e^2/h)の整数倍に量子化されるようになり、磁場の逆数の関数として表示すると、階段状の等間隔のプラトーを示すようになることが確認された。また、コンダクタンスの揺らぎはプラトー間のみに現れ、その大きさは、金属相における普遍的なコンダクタンスの揺らぎ(UCF)と同程度の大きさになることもわかった。このような性質は、バルクの状態とエッジ状態の混合がコンダクタンスの揺らぎにおいて重要であることを示すともに、量子ホール系におけるこれまでの結果と一致していることから、この領域が量子ホール系と同じユニバーサリティーであることを示唆している。さらに、このようなプラトー間転移の転移点におけるコンダクタンスの臨界分布についてサンプル数を増やして詳しく調べたところ、コンダクタンスの平均値や、ランダム磁場の振幅の大きさにほとんど依存しない普遍的な分布関数が得られた。この臨界分布関数はUCFの場合のようなガウス分布とは異なり、[n,n+1]e^2/h(n:整数)の範囲に広く分布し、それ以外の領域では急激に減少する形をとることが明らかとなった。このような分布関数の性質はエッジ状態の影響と考えられるが、普遍性という観点から、高ランダウ準位間の量子ホール転移における普遍的な性質であることが期待される。
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Research Products
(2 results)