2004 Fiscal Year Annual Research Report
擬一次元混合原子価金属錯体における光励起後の超高速格子緩和過程
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16540297
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
和田 芳樹 独立行政法人物質・材料研究機構, 物質研究所, 主幹研究員 (90343847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 信之 国立大学法人東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (80219427)
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Keywords | 一次元電子系 / 格子緩和 / 超高速分光 / 高分子 / 光構造変化 / コヒーレントフォノン / ソリトン / 自己束縛励起子 |
Research Abstract |
平成16年度は、共鳴移動エネルギーと電子格子相互作用の競合が光励起後の格子緩和過程に与える効果について明らかにするため、Pt錯体についてハロゲンイオンを塩素、臭素、ヨウ素に置換した錯体の合成、条件の最適化による光学的測定に適した薄片結晶化を行い、得られた単結晶試料について、フェムト秒白色光をプローブ光としたポンプ&プローブ法による過渡吸収測定、過渡反射測定(時間分解能150fs)を主な手段として可視、近赤外領域で行い、格子緩和状態がバンドギャップ内に引き起こす吸収帯の時間変化から光励起後の格子緩和のダイナミックスを観測した。さらに、ロックイン検出法による過渡反射、吸収の高精度測定のシステムを試作した。 その結果、塩素、臭素、ヨウ素錯体について、共通に、電解移動励起子を始状態として光生成した場合には、励起直後に自己束縛励起子の振動励起状態、中性ソリトンが光生成することが明らかになった。一方、自由電子電子正孔対を光生成した場合には、共通に、光励起直後にポーラロンの振動励起状態、荷電ソリトンが効率的に生成する事が明らかになった。中性、荷電ソリトンとも生成時間は時間分解能以下であり、これは散逸的なポテンシャル面構造によると考えられる。一方、自己束縛励起子、ポーラロンには有限の生成時間が観測され、これは振動励起状態のエネルギー緩和の時間に対応すると考えられる。塩素、臭素、沃素の順のハロゲン置換により、これらの生成時間は減少し、過渡吸収の強度が増加する事が明らかになった。これは共鳴移動エネルギーと電子格子相互作用の競合の変化によると考えられる。 沃素錯体において、自己束縛励起子、ポーラロンの光誘起吸収帯に、波束として生成したこれらの状態の、ポテンシャル面上の安定点を中心とした振動運動によると考えられるコヒーレントフォノン振動が見られることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)