2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540318
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 新 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (70253052)
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Keywords | 金属絶縁体転移 / 遷移金属化合物 / 軌道縮重度 / 原子内交換相互作用 / 軌道秩序 / 電荷秩序 / 高エネルギー分光 |
Research Abstract |
マグネタイトFe_3O_4はフェリ磁性体であり、約120Kで電気抵抗に2桁の飛びが生じ、同時に構造相転移を起こす。半世紀以上にわたり精力的な研究がなされてきたにも関わらず、この1次転移がVerweyが提案したように低温相でのFe BサイトのFe^<2+>イオンとFe^<3+>イオンの電荷整列に起因するのか、そもそも電荷秩序が存在するのかすらも明らかになっていない。我々はFe Bサイトのminority spinを持つt_<2g>電子のモデルとしてspinless-3バンドハバードモデルを仮定し、有限サイズクラスターの厳密対角化法とHatree-Fock近似を用いて、このいわゆるVerwey転移の前後での電荷・軌道秩序を議論した。その結果、non-collinearな軌道磁気モーメントを伴った複素軌道秩序状態が高温および低温相の両方で実現しているという従来とは全く異なる説を提案した。ここで言う複素軌道秩序状態とは、占有軌道の波動関数が3つのt_<2g>軌道xy,yz,zxの複素係数の線形結合として表される秩序のことである。このモデルではVerwey転移は3d電子状態と格子歪みとの強い結合によって、低温相で電荷秩序を伴ったより長周期の秩序状態が実現することに起因し、バンドギャップの異なる半導体から半導体への転移であると解釈される。 銅酸化物高温超伝導体と同じ層状ペロブスカイト構造のLa_2NiO_4のLaを適当な割合でSrに置換すると低温Ni^<2+>イオンとNi^<3+>イオンがNiO_2平面に反強磁性秩序を伴って縞状に整列する。しかしこの秩序状態は長周期であり、その電子状態を実験より解析するのは容易ではない。最近、軟X線領域での共鳴X線散乱により2p内殻から3d軌道への共鳴励起が可能になった。この手法は従来の共鳴X線散乱と異なり、3d軌軌道偏極および磁気状態の直接的な情報を得ることができる。この手法によりLa_<1.8>Sr_<0.2>NiO_4に対し、ケルン大学のグループにより電荷秩序及び反強磁性秩序に対応する異常Bragg散乱が観測された。我々は3d軌道の縮重度を考慮した多電子描像に基づく有限サイズクラスター模型を用いて散乱強度のエネルギー及び偏光依存性を解析しNi 3d電子状態に関し詳細な情報を得た。銅酸化物超伝導体のCuo_2平面の場合と同様に、この系のNiO_2平面も二次元性が強く、Sr置換によりドープされたホールは面内酸素の2p軌道上にあることが分かった。
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Research Products
(6 results)