2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540330
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
|
Keywords | 遷移金属酸化物 / 電子相関 / 強相関電子 / 密度汎関数法 / 動的有効場理論(DMFT) / 量子モンテカルロ法 / エムベッディッドGreen関数法 / FLAPW法 |
Research Abstract |
今年度はSrVO_3(001)表面の電子構造をLDA+DMFT法により計算した。本系は立方ペロブスカイト型の結晶構造を持ち、Vの電子配置は(3d)^1である。最近の光電子分光の実験によりSrVO_3表面ではVのt_<2g>価電子の電子相関効果がバルクより大きいことが判明した。 実験的にSrVO_3(001)表面の原子構造は決定されていない。そこで、まず緩和の無いSrVO_3(001)理想表面の電子構造を、最外原子層がSrO層の場合とVO_2層の場合についてエムベッディッドGreen関数法によりLDAの範囲で計算した。この際、平成16年度の予備的計算よりもエムベッディッド領域内の原子層数を増やして電子構造の表面からの距離依存性を調べた。その結果、V原子の電子構造がバルクと異なるのは表面第1層に限られることが分った。 次にユーリッヒ研究センターのD.Wortmann博士との共同研究により、薄膜近似のFLAPW計算プログラム(FLEUR)を用いて、SrVO_3(001)表面の原子緩和を全エネルギーから決定した。その結果、V原子を囲む酸素原子の表面に置ける変位は比較的小さいことが分った。この原子緩和を取り入れた表面構造を用いて半無限SrVO_3(001)表面の電子構造を再びエムベッディッドGreen関数法によりLDAの範囲で計算した。 以上、最外原子層がSrO層とVO_2層の場合、また原子緩和の有無により、4半無限表面系の電子構造がLDAの範囲で得られた。ユーリッヒ研究センターのA.Liebsch博士との共同研究により、それぞれの場合について、Vのt_<2g>価電子のLDA状態密度を用いて、Vの電子励起スペクトルを、量子モンテカルロ-DMFT法により計算した。最外原子層がVO_2層の場合は、Vのd_<xz>、d_<yz>バンドの有効バンド幅が表面で減少することにより電子相関の効果が増大し、バルクに比べてサテライトピークが増大することが分った。最外原子層がSrO層の場合は、Vの正8面体対称性が失われることにより、バルクとは電子構造が大きく変わる。電子相関の効果により、d_<xy>バンドからd_<yz>、d_<xz>バンドへの電荷移動が促進されることが分った。現在、これらの結果を論文にまとめている。
|
Research Products
(2 results)