2006 Fiscal Year Annual Research Report
磁気双極子相互作用とリエントラントスピングラス転移
Project/Area Number |
16540335
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松原 史卓 東北大学, 大学院工学研究科, 教授 (90124627)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白倉 孝行 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90187534)
鈴木 伸夫 東北文化学園大学, 科学技術学部, 講師 (30302186)
|
Keywords | リエントラント相転移 / スピングラス / モンテカルロ・シミュレーション / 希釈磁性体 / 磁気双極子相互作用 |
Research Abstract |
多くのスピングラス物質では、ある磁性原子濃度領域で、温度を下げてくると一度強磁性状態が出現し、さらに温度を下げると強磁性が消失しスピングラス相が現れる「リエントラントスピングラス(RSG)転移」が見られる。しかし、その機構は理論的に未だ解明されておらずスピングラスの最大の謎となっている。ネックはRSG転移を示す模型が未解明の点にある。申請者等は前年度までの研究でRSG転移模型を提案してきた。本年度は以下の研究をおこなった。 1. Eu_xSr_<1-x>Sの磁気相図 我々の提案した模型の実験物質は希釈磁性体Eu_xSr_<1-x>Sである。我々はこの物質に対する大規模モンテカルロシミュレーションを実行した。コンピュータ上に様々な磁性原子濃度x、様々な格子サイズの模型を用意し、高温から温度を下げつつシミュレーションを実行し、磁化とスピングラス相関長を測定した。有限サイズスケーリング解析により、出現磁気相と相転移温度を決定した。この研究から得られた磁気相図は実験的に決定されたEu_xSr_<1-x>Sの磁気相図と定量的にも良い一致をした。提案模型の正当性が明らかになってきた。 2. RSG転移と揺動クラスター RSG転移の機構を調べるために提案RSG模型のサイト磁化を計算した。シミュレーションでのサイト磁化の測定例はない。我々は系の一様回転を除去する新たなシミュレーション技法を開発し、サイト磁化の測定に成功した。サイト磁化を分析した結果、この模型の強磁性相には揺動スピンクラスターが存在することが分かった。温度を下げると揺動スピンクラスターが凍結し、これによって強磁性長距離秩序が強磁性クラスターに分裂し磁化が消失することが明らかになった。揺動クラスターは磁性原子濃度の低い領域に現れる。従って、RSG転移はランダム磁性体に特有な磁性原子濃度のバラツキによって誘起されるといえる。
|
Research Products
(4 results)