2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540354
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
筒井 泉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教授 (10262106)
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Keywords | 特異点 / 可解系 / 量子エンタングルメント / ゲーム理論 / 量子井戸 / 粒子の統計性 |
Research Abstract |
本研究課題のプロジェクト2年目にあたる17年度では、研究実施計画に従って、(1)量子特異点系の統計性質についての精密化、(2)N=3 Calogero系での特異点の取り扱いの一般化、及び(3)量子縺れの物理効果を量子ゲーム理論において探求すること、の3つのトピックについて研究を行った。 まず(1)の量子特異点系の統計的性質については、粒子の統計性の差異や温度依存性等に関し、解析的手法による近似法を開発することによって、数値計算の結果と極めて良く一致する表式を見出した。これにより、前年度に数値計算によって見つけたスケーリング則(低温極限における量子圧や最小圧の値は、粒子がボソンの場合は粒子数Nに、フェルミオンの場合にはNの2乗に比例すること)を解析的に裏づけるとともに、さらに最小圧を与える温度も簡単な式に表現することが可能になった。 (2)のN=3 Calogero模型の量子解の一般的化については、量子特異点の一般論から許されるU(2)の特異点族のうち、前年に得た特殊な対称性を持つ解でとは異なる、スケール不変性と鏡映不変性の両者を持つ一群の量子解を構築した。これは良く知られたCalogeroの解を含んだもので、同種粒子系よりもさらに一般的なものであるが、スペクトルの構造から代数的な可解性のあることが判明しており、代数的なアプローチによる他の研究との接点が明らかになっている。 (3)については、まず量子ゲーム理論そのものの定式化をさらに進め、前年に構成した枠組とは別に、Schmidt分解に基づく枠組を構成することに成功した。以前の枠組の長所は古典ゲームからの差異が明瞭になることであるが、新たに開発した枠組の特徴は、問題となっている量子縺れを定量的に評価するのに適していることであり、またより簡明なプレーヤーの戦略記述を与えるものである。これら2つの枠組を用いて、対称ゲーム理論におけるNash平衡点の一般解を構成し、その種類や挙動から、与えられた量子ゲームのNash平衡解から見た詳細な相構造を明かにした。この相構造は、数年前より他の研究グループが示唆していたものを遥かに精密にしたもので、これによって量子ゲームのディレンマの解消が、どのような量子縺れの下で可能になるかについて、明解に判断できるようになった。
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Research Products
(2 results)