2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540354
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
筒井 泉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教授 (10262106)
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Keywords | 特異点 / 可解系 / 量子エンタングルメント / ゲーム理論 / 量子井戸 / 粒子の統計性 / Nash平衡 |
Research Abstract |
本研究課題のプロジェクト3年目にあたる18年度では、研究実施計画に従って、(1)量子特異点のある多粒子系の統計的性質についての精密化、及び(2)量子ゲーム理論の一般論の構築と量子戦略における量子縺れの効果、の2つのトピックについて研究を行った。 まず(1)の量子特異点系の統計的性質については、前年度に得た結果をさらに拡張し、粒子の統計性の差異や温度依存性等に関する解析的手法を改善することに成功した。古典的には単なる点に過ぎない量子壁が、その量子的な性質によって粒子の間に非自明な相互作用を実効的に発生させ、結果的に量子壁上に(古典論では存在しない)量子圧を発生させる。例えば量子井戸においては、粒子がボソンであるかフェルミオンであるかによって、発生する量子圧の大きさと粒子数との間に特有の関係が存在し(ボソンの場合は粒子数に比例、フェルミオンの場合は粒子数の自乗に比例)、かつこれらの統計性によって特徴的な温度依存性を持つ。このような著しい性質は、量子井戸系のみならず。例えば(低次元系での閉じ込めモデルとして標準的な)調和振動子系においても見ることが可能であり、量子井戸と類似のスケーリング則(低温極限における量子圧や最小圧など)が存在することを、新たに発見した。これは、量子特異点の物理効果がユニバーサルな性質を持つことを示唆するものである。 また(3)については、量子ゲーム理論の定式化において、量子縺れを定量的に評価するのに適しているSchmidt分解に基づく枠組を完成させ、これに基づいて2人プレーヤーの対称ゲームにおけるNash平衡点の一般解の完全なリストを作ることに成功した。得られたNash平衡解は、量子縺れの存在下でのみ許される特殊解を除いて、すべて古典ゲームの知られた平衡解の自然な拡張になっている。さらに、これらのNash平衡解の挙動から、与えられた量子ゲームの戦略の安定性における相構造が明らかになり、特に古典ゲームのディレンマ解消問題に対して系統的な分析が可能になった。具体例として良く知られた数種(「囚人のディレンマ」、「男女の諍い」、「鹿狩り」など)の古典ゲームの量子版を詳細に調べ、量子ゲームのディレンマの解消の条件と、その際に必要な量子縺れとの量的関係を明確にした。
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Research Products
(2 results)