2004 Fiscal Year Annual Research Report
高密度イオンビームを用いた新世代・電子-イオン衝突実験
Project/Area Number |
16540363
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
坂上 裕之 核融合科学研究所, 連携研究推進センター, 助手 (40250112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 誠 神戸大学, 理学部, 助教授 (90170646)
平山 孝人 立教大学, 理学部, 助教授 (40218821)
山田 一博 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助手 (80222371)
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Keywords | 電子衝突 / イオン励起過程 / Auger電子分光 / 電離断面積 |
Research Abstract |
電子-イオン衝突過程の相互作用の理解は、原子・分子物理学の分野において最も興味ある過程の一つである。しかしその衝突反応断面積は10^<-20〜-18>cm^2程度と小さく、標的イオン密度の低さと相まって非常に困難な実験であり、ほとんど実験データがないのが現状である。我々はこの困難を克服するために、現在この電子-イオン衝突実験専用に開発した大強度イオン源を用い、またノイズに強いタンデム型の放出電子分光装置を開発し、多くの独自のアイデアを駆使して研究にあたっている。本研究の是非を決めるポイントの一つとしてイオン源の性能が挙げられる。今年度我々は、まずイオン源を原子・分子衝突実験の交差ビーム法に耐えうる高品位・高強度イオン源として改造を行った。改造の重要な点の一つとして、ビーム輸送系が挙げられる。このイオン源の特徴である高密度のイオンビームを実現するには、イオン自身が作る空間電荷効果を考慮してビームラインを設計することが要求される。我々は荷電粒子軌道計算用コンピュータプログラムを駆使し、三次元空間で空間電荷効果まで取り入れた軌道シュミレーションを注意深く行い、ビームレンズ系の設計・製作を行った。またもう一つのポイントとして高性能の放出電子エネルギー分析器が挙げられる。我々が独自に研究開発したタンデム型の0°方向高分解能電子エネルギー分析器を導入した。イオンビーム軸に対して0°方向に放出される電子を分析することによりドップラー広がりが無い高分解能のエネルギースペクトルを得ることができる特徴を持つ。また減速スキャン法で電子のエネルギーを数eVにまで落とすことにより、エネルギー分解能数十meVを達成することができる。今年度、上記の点を重点的に進めており、現在までに達成した実験パラメータを次に示す。標的イオン:加速電圧50kV Ar^+=1.5mA, Ar^<2+>=150μA, Xe^+=200μA,電子ビーム:加速電圧500V数百μA。放出電子光装置はe-Ar, Xe衝突での弾性散乱やAuger電子で調整を行っている。e-Arの弾性散乱スペクトルから電子のエネルギー幅は0.5eV程度と見積もられ、e-ArのLMMAuger電子分光スペクトルから装置の総合的な性能評価をすることができた。またe-Xe衝突でのNOOAugerスペクトルも得られた。今後、分析器の捕集効率と分解能を上げ、実験を進めていきたいと考えている。
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