2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540370
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 光男 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (40201769)
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Keywords | 配向ガラス / プラスチック結晶 / 1-シアノアダマンタン / 核磁気共鳴 / 分子動力学シミュレーション / 相転移 / ダイナミクス |
Research Abstract |
プラスチック結晶1-シアノアダマンタンをガラス転移温度170K以下に急冷すると、分子の重心に関して併進対照性をほぼ保ち、分子配向がランダムに凍結した配向ガラス相へと転移する。また、プラスチック相から徐冷すると、この物質は準安定相を介して秩序相に転移する。この物質のプラスチック相と配向ガラス相のダイナミクスを核磁気共鳴(NMR)、分子動力学(MD)シミュレーションで調べ、ガラス相の本質を探ることを本研究の目的とする。 炭素核のNMRから、プラスチック相において、分子は<001>の6配向運動のほかに<111>の8配向運動をしていることが検出された。<111>配向運動は分子主軸が<111>方向に秩序化する秩序相に転移するための前駆現象であり、配向ガラス相への転移において重要な役割を担わないことが分った。また、配向ガラス相のスピン格子緩和時間の温度依存は、アレニウス則に従わないことが分った。解析の結果、スピン格子緩和時間に現れた運動(分子主軸まわりの回転)はアレニウス則からの予測より速く、ガラス相では分子の運動は容易になっていると考えられる。 MDシミュレーションでは、1-シアノアダマンタンを水素原子を含めた27サイトの剛体として、Backigham型ポテンシャルを用いた。ポテンシャルを精密化することにより、秩序相からプラスチック相への相転移がシミュレーションで再現された。プラスチック相における分子配向運動をCole-Cole解析した結果、<001>配向運動は多分散であり、その程度は温度の低下とともに増大することが分かった。また、運動の相関時間の分布は、ガウス型ではなく、指数関数的であるという結論を得た。
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