2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540370
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 光男 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (40201769)
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Keywords | ガラス転移 / プラスチック結晶 / 配向グラス / 回転ダイナミクス / MDシミュレーション / 核磁気共鳴 / 1-シアノアダマンタン |
Research Abstract |
C_<3v>の対称性を持つ1-シアノアダマンタンC_<10>H_<15>CNは、プラスチック相において分子の重心に関する併進対称性を保ち、分子主軸まわりで回転しながら[001]及びそれに等価な6つの配向間を飛び移る無秩序な状態にある。プラスチック相の1-シアノアダマンタンをガラス転移点T_g=170K以下にクエンチすると、併進対称性を維持した状態で分子配向がランダムに凍結した配向ガラス相へと転移する。この物質のプラスチック相と配向ガラス相のダイナミクスを核磁気共鳴(NMR)、分子動力学(MD)シミュレーションで調べ、ガラス形成の起源を探ることを本研究の目的とする。 ^<13>C核のNMRから、配向ガラス相においても分子は主軸(C_3軸)のまわりで回転しており、この回転運動の活性化エネルギーはプラスチック相における回転運動の値と比較すると、有意に小さいことが分った。これは配向ガラスが単にプラスチック相が凍結したものではなく、ガラス相では分子の運動が容易に起こるような分子配置がとられていることを暗示している。また、現在ガラス相における分子主軸の配向運動を検出するためにシアノ基(-CN)の炭素核のスペクトルを解析している。 分子を27サイトで表すMDシミュレーションでは、プラスチック相における[001]の6配向運動の相関時間には分布があり、配向運動の相関関数C(t)はstretched exponentialでフィットできることが分っている。今年度は相関時間の分布の原因を明らかにするために、配向運動の相関時間の分散を調べた。現段階では、q=(1/2,1/2,0)において配向運動の相関時間が長くなる結果が得られている。これは[110]方向で分子が反強誘電的な配列をとる確率が高いことを表している。現在、プラスチック相をクエンチするための予備的計算を行っている。
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Research Products
(4 results)