Research Abstract |
本研究の目的は,「季節サイクルの変調」という視点を新しい切り口として,異常気象や,温暖化などに伴う東アジアの気候変化予測のための基礎的知見を得ることである。今年度は,梅雨期だけでなく,秋雨期,春の時期,等も解析し,例えば次の点が分かった。 1.九州北西部では,梅雨前線最盛期に,前線帯での降水量の大きな日変化が見られ,それが大陸側の梅雨前線南方〜前線帯での日変化に関連しているなど,広域の日変化が梅雨システム発達のタイミングを決める一つの重要な因子になりうることが分かった。 2.最近25年間の梅雨期の解析で,日本や中国での降水増加とモンゴルやフィリピン付近での降水減少という有意なトレンドを見出し,それが,シベリアやチベットからのロスビー波の伝播とフィリピン周辺での対流の不活発化が重要であることを,線形プリミティブモデルの応答実験などから示した。また,この過程について気候モデルで検証し温室効果ガスや地(海)面条件などの影響を調べるために,地域的な応答もよく再現出来るようなモデルの改良も進めた。 3.秋雨前線帯への平均場の下層南風は強くないものの,亜熱帯高気圧の変動に伴う月平均場南風の年々変動と,台風活動に伴う南西諸島〜西方域での低圧域形成による短周期季節内変動とが重なって秋雨前線への南風が大きく変動し,それが秋雨前線への水蒸気輸送に重要な役割を果たす可能性が示された。また,九州北西域では日本列島での全国的な秋雨期の前の8月下旬〜9月上旬頃に(朝鮮半島南部に前線帯)降水量のピークを迎え,しかも,全国的な秋雨期とは降水過程が異なる,等の季節進行過程を見出した。 4.日本付近では,南北で気温の値自体は大きく異なるものの,九州〜北海道まで一貫して4月初め頃に昇温の最も大きな時期となること,それは,日々のシステムで見てもシベリア南東部に現れる大気システムが3月と4月で大きく変化することを反映していた。
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