2005 Fiscal Year Annual Research Report
亜酸化窒素の濃度分布を用いた北極域大気と中緯度大気の混合の年々変動に関する研究
Project/Area Number |
16540405
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
秋吉 英治 独立行政法人国立環境研究所, 成層圏オゾン層変動研究プロジェクト, 主任研究員 (10270589)
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Keywords | 亜酸化窒素 / 化学輸送モデル / 成層圏 / 極渦 / PDF解析 / 北極 / 極渦崩壊時期 / 鉛直移流 |
Research Abstract |
北半球中・高緯度下部成層圏における物質分布の輸送による年々変動を理解するため、CCSR/NIESナッジング化学輸送モデルを用いて計算された1957年から2002年までの45°N以北の高度亜酸化窒素の濃度分布をProbability Distribution Function(PDF)解析した。その結果、高度600K(22-24km)の亜酸化窒素の濃度は、北極渦の崩壊が早い年と遅い年との間に明確な違いが見られた。すなわち、極渦崩壊時期の早い年にはその濃度は低くなる傾向があり、極渦崩壊時期の遅い年にはその濃度は高くなる傾向があることがわかった。次に、この極渦崩壊の早い年と遅い年との間の濃度の違いの原因を調べたところ、鉛直移流の影響を強く受けていることがわかった。つまり、冬季成層圏の波動活動が活発な年は、極渦崩壊が早く、それに伴う下降流も大きい。そして、亜酸化窒素は下部成層圏で鉛直方向に強い負の濃度勾配を持っている(上層に行くほどその濃度が急激に減少する)ので、強い下降流による、より上層からの濃度の低い亜酸化窒素の移流が大きいと下部成層圏の濃度が低くなる。一方、冬季成層圏の波動活動が不活発な年は、極渦崩壊が遅く下降流が小さいので、下部成層圏の亜酸化窒素濃度は高くなることがわかった。水平方向の移流が濃度に及ぼす影響の解析も行ったが、鉛直方向の移流の効果よりは小さいことがわかった。亜酸化窒素は下部成層圏でその光化学寿命が数年から数十年と非常に長いので、物質輸送のトレーサーと考えることができ、本年で得られた研究結果は、亜酸化窒素濃度を利用して成層圏の物質輸送の年々変動の定量的な解析が可能なことを示している。
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Research Products
(1 results)