2006 Fiscal Year Annual Research Report
亜酸化窒素の濃度分布を用いた北極域大気と中緯度大気の混合の年々変動に関する研究
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16540405
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
秋吉 英治 独立行政法人国立環境研究所, 大気圏環境研究領域, 主任研究員 (10270589)
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Keywords | 亜酸化窒素 / 化学輸送モデル / 成層圏 / 極渦 / PDF解析 / 北極 / 極渦崩壊時期 / 子午面循環 |
Research Abstract |
昨年度行った北半球中高緯度下部成層圏における亜酸化窒素(N2O)濃度の分布と極渦崩壊時期との関係について、その結論の信頼性をさらに高めるため、追加実験を行いその結果を解析した。 (1)昨年度の結果は、NCEPデータの気温と水平風速を使って化学輸送モデル計算を行って得られたものであった。NCEPデータの上限高度は10hPaと比較的低く、これが下部成層圏の温位600K面での解析結果に影響を及ぼすことも考えられるので、今年度は、上限高度が1hPaのERA40データを使って再計算を行い結果の解析を行った。 (2)昨年度の結果は、気温と水平風を大循環モデルにナッジング(データ同化の一手法)させて化学輸送モデルとし、N20濃度分布を計算させた結果を解析したものであった。大循環モデルの気温に実際の観測値からのずれが内在する場合、気温の同化は子午面循環を歪める可能性がある。気温の同化は、極域オゾン破壊など、気温に敏感な化学反応を含む過程の解明をターゲットにしている場合は必須であるが、下部成層圏のN2Oのように、ほぼトレーサー的に振る舞う物質の分布の解明を目的にしている場合は必須ではない。それゆえ、今年度は、温度同化をせずに、水平風速のみの同化を行って計算した結果の解析を行った。また、データ同化を行わない化学気候モデルの中のN2O分布についても解析を行った。 以上の追加実験により、北極渦崩壊の早い年には北半球中高緯度全体で、極渦崩壊時の晩冬から春期にかけてN2O濃度がかなり低くなり、それは、主に子午面循環の下降流が強まることが原因であることがわかった。しかしながら、極渦の内部のみを解析すると下降流の影響は小さく、水平発散やサブグリッドスケールの拡散の影響が大きいことがわかった。この結果は、極渦内のN2O濃度の変化に関しては、鉛直移流のみならず水平方向の混合も重要であることを示している。
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Research Products
(2 results)