Research Abstract |
福井県大野市東側に位置する経ヶ岳(1,625m)は火山体の原型の多くを失った古い火山であり,その南西麓,六呂師周辺には火山体の崩壊により発生した岩屑なだれ堆積物が広く分布している.また本地域南東側には,中部地方の右横ずれ断層系に属する鳩ヶ湯断層,上唯野断層,宝慶寺断層が左雁行状に連なっており,これらを結ぶ南北走向の逆断層である木落断層が盆地南東部に位置している.また鳩ヶ湯断層はその北東方の跡津川断層に連なっている. これらの北東-南西方向に連なる断層群はGPS連続観測から推定された新潟から神戸にかけてのびる幅数10〜200kmの変形集中帯(新潟-神戸構造帯)の一角に位置しており,跡津川断層では河成段丘のずれから2〜3m/1,000年,扇状地面のずれから3〜5m/1,000年の右横ずれ(東郷・岡田,1983)とA級の活動度を持っている.木落断層でも埋没土壌のずれから1.7〜2.3m/1,000年(山本,2004)と活発な活断層であることが明らかとなった. これらの断層近傍には多くの大規模崩壊地が点在しており,その一つ,経ヶ岳南西麓で発生した岩屑なだれについて,その発生源,堆積物の分布,崩壊回数,発生年代,流下ルートの調査を行った.岩屑なだれの崩壊源は,地形および堆積物の分布から経ヶ岳南西の馬蹄形凹地,およびその西側,保月山南のスプーン底型の凹地と推定される.また少なくとも5回の崩壊があったことが明らかとなった.最も古いものは,約3万年前の経ヶ岳の崩壊およびその直後の保月山の崩壊である.また約2万年前の経ヶ岳の崩壊,約5000年前の経ヶ岳の崩壊,および同じ頃の保月山付近の小崩壊も明らかとなった.約5000年前の崩壊については,近傍の木落断層の活動年代とほぼ一致し,断層活動と大規模崩壊との関連が推定された.
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