2004 Fiscal Year Annual Research Report
亜臨界および超臨界流体中における化学反応ダイナミクスに対する拡散の効果
Project/Area Number |
16550023
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
伊吹 和泰 同志社大学, 工学部, 教授 (30201940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 正勝 同志社大学, 工学部, 教授 (50121588)
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Keywords | 超臨界流体 / 亜臨界状態 / 拡散 / 電気伝導度 / 拡散律速反応 |
Research Abstract |
拡散が非常に速い亜臨界・超臨界流体中における反応ダイナミクスを理解するための枠組みを確立するために,以下の研究をおこなった。 まず一つめは,亜臨界・超臨界アルコール中における単純電解質の電気伝導度測定である。これによって,亜臨界・超臨界流体の特徴である気体と液体の中間的な密度におけるイオンの拡散挙動を知ることができる。本研究では,特に高密度液体との違いを明確に知るため,高密度において妥当であると考えられている連続体モデルがどの程度の低密度まで適用できるかを明らかにした。具体的には,メタノール中における臭化テトラアルキルアンモニウムの電気伝導度を気液共存線に沿って200℃まで測定した。200℃付近で密度が臨界密度の2倍程度の比較的低密度条件では,イオンの拡散速度に比例する電気伝導度が室温付近の4倍程度の大きさになるが,イオンの電荷を考慮した連続体モデルによって再現可能であることを示すことができた。ただし,室温付近では,溶媒の水素結合構造の影響で,必ずしも実験値と連続体モデルの予測値が一致しないこともわかった。現在,実験条件をさらに広い温度・圧力範囲に広げるとともに,溶媒をエタノールや軽水・重水に変えて測定を行い,さらに一般的な知見が得られるように努力している。 もう一つは,超臨界レナードジョーンズ流体中における拡散律速反応のシミュレーションである。超臨界状態では,上に述べたように拡散係数が大きいだけでなく,拡散メカニズムも高密度とは異なり,分子運動の慣性効果が重要になる。その結果,拡散律速反応の過渡効果として知られている速度定数の減衰挙動が高密度と比べて顕著ではなくなると予想される。これを確かめるために計算機実験をおこない,慣性効果を考慮にいれたフォッカープランク方程式による理論と比較した。理論と計算機実験の一致はすべての密度で良好であった。 以上の二つの研究により,亜臨界・超臨界状態における拡散律速反応の特徴を明らかにできた。
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