2004 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二分子膜を反応場とする光誘起電子移動反応の機構と高効率化に関する研究
Project/Area Number |
16550030
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40192447)
|
Keywords | 光誘起電子移動反応 / 脂質二分子膜 / ピレン誘導体 / 光エネルギー変換 / ベシクル |
Research Abstract |
球状の脂質二分子膜(ベシクル)の疎水場に増感剤となるピレン誘導体を取り込ませ、ベシクル内水相に電子供与体、外水相に電子受容体を加えた系を作成すると、内水相から外水相への方向性をもった電子輸送反応が光化学的に駆動される。この現象の機構解明と電子輸送効率の向上を目的として、今年度は、(1)長鎖アルキル基などで連結されたピレン二量体の合成とその増感剤としての評価、(2)光誘起電子輸送反応を抑制する因子の解明、(3)電子輸送反応の反応場依存性、の三点について詳細な検討を行なった。まず、連結型ピレン二量体は、対応する連結部の二酸塩化物とピレニルメタノールを反応させることによって、連結部の長さや電子的性質が異なる数種類の新規化合物の合成に成功した。これらの化合物について、ベシクルを反応場とする電子輸送反応における増感剤としての有用性を検討したところ、ベシクルの疎水場を横断する長さをもつメチレン鎖で連結された二量体において、著しい輸送効率の増大が確認された。第二の点については、内水相に封じたアスコルビン酸ナトリウム(Asc)の定量方法を確立し、光照射に伴うAscの減少過程を追跡することができた。得られた結果から、Ascの減少量は電子輸送量に比べてかなり大きいものの、その濃度の低下は電子輸送反応を抑制する因子ではないことが示唆された。反応場依存性については、これまで脂質二分子膜を形成させる物質として卵黄レシチンを用いていたが、人工的に合成したリン脂質を使用したところ、同様に光誘起電子輸送反応が進行することが判明した。さらに、この系にコレステロールを添加すると輸送効率に顕著な低下が観測された。今年度の研究によって得られたこれらの成果は、疎水場を横断する電子移動過程の機構解明に重要な知見を与えるのみならず、この系を高効率的な光-化学エネルギー変換系に展開していくために有用な指針を与えるものである。
|
Research Products
(1 results)