2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規な複素環6π電子系非局在化陽イオンアゼピニウムの合成と反応性
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16550039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐竹 恭介 岡山大学, 理学部, 助教授 (50033387)
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Keywords | 非ベンゼン系芳香族 / アザトロピリウムイオン / 非経験的分子軌道法 / アゼピン / アゼピニウムイオン / 複素環化学 / 芳香族性 / 核磁気共鳴スペクトル |
Research Abstract |
炭化水素の6π電子系七員環陽イオンはトロピリウムイオンと称され,1950年代に合成された。一般に極めて活性な化学種とされる炭素陽イオンにもかかわらず,その特異な安定性は芳香属性に関するヒュッケル理論で説明することができる点で注目された。したがって,トロピリウムイオンは非ベンゼン系芳香族化学の代表的な化合物として物理有機化学の典型的な研究対象となってきた。ところが,環にヘテロ原子を含む類縁体はこれまで見出されていなかった。理論的研究が先行しており,近年,環に窒素原子を持つアザトロピリウムイオンは陽電荷が非局在化した6π電子系芳香族イオンもしくは窒素原子上に電荷が局在化したビラジカルアレニウムイオン構造であることが非経験的分子軌道計算により予測されていた。炭化水素のトロピリウムイオンと複素環化合物であるアザトロピリウムイオンの関係はベンゼンとピリジンの関係に類似しており,アザトロピリウムイオンが未だ合成的化学的に確認されていないのは,有機化学における物質の連続性の欠如であると指摘されていた。本研究ではこのMissing Linkを補うべく,アザトロピリウムイオンの前駆物質の効率良い合成法の開発から取り組んだ。 アザトリエン構造を持つアゼピンの中で,熱力学的に最も安定とされる異性体は3H-アゼピンであり,合成法は知られている。この3H-アゼピンを定量的に熱力学的により不安定即ち反応性に富む2-アルコキシ2H-アゼピンに変換する方法を確立し,これをアザトロピリウムイオンの前駆体とした。四塩化チタンを用いた脱アルコキシ反応により,溶液中でアザトロピリウムイオンが生成していることを確認し,これが6π電子系非局在化陽イオンであり新規な複素環芳香族陽イオンであることを示した。
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Research Products
(3 results)