2005 Fiscal Year Annual Research Report
新規な複素環6π電子系非局在化陽イオンアゼピニウムの合成と反応性
Project/Area Number |
16550039
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐竹 恭介 岡山大学, アドミッションセンター, 教授 (50033387)
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Keywords | 芳香族性 / 非ベンゼン系芳香族化合物 / アゼピニウムイオン / アザトロピリウムイオン / アゼピン / ab initio計算 / シグマトロピー転移 / 複素環化合物 |
Research Abstract |
アゼピニウムはその炭化水素類縁体であるシクロヘプタトリエニウム(トロピリウム)と同様に6π電子系芳香族陽イオン種であるか,ニトレニウムイオン構造を持つ3重項ビラジカル種として存在するかに興味が持たれ,種々の近似での理論計算に基づく研究がなされてきた。本研究で初めてアゼピニウムが合成され,その構造を核磁気共鳴スペクトルで詳細に検討したところ,イオン種は窒素七員環に非局在化した芳香族陽イオンであることが明らかとなった。得られたアゼピニウムはこれまでに例がない新規な非ベンゼン系複素環芳香族化合物である。 アリール分子と求電子試剤との反応は求電子芳香族置換反応として分類され,合成反応の中でももっとも重要な反応であり,求電子試薬の性質および反応基質となるアリール分子の性質による生成物の予測は,過去の膨大な実験結果から行われてきた。しかし,近年はこの反応の予測は電子構造理論に基づく量子化学計算でさらに詳しく論じられる。合成したアゼピニウムの挙動を検討する目的で,種々のアリール分子との反応を行った。等電子構造のトロピリウムは陽イオン種であるにもかかわらずアリール分子との置換反応生成物を与えないことが知られているが,アゼピニウムはベンゼンをはじめとするアリール分子と反応生成物を与えた。これは環内に電気陰性度の大きいsp^2窒素原子が導入されたため共鳴エネルギーが減少し,より強い反応性をもつと理解できる。また,反応生成物の解析から明らかになった反応位置選択性はab initio密度汎関数計算による理論的予測と一致し,求電子試剤であるアゼピニウムが一重項非局在化陽イオンであることを支持した。 以上の結果は,アゼピニウムが合成化学的に極めて重要なフリーデル・クラフツ反応の求電子試剤として利用可能であり,アリール分子に直接C_6N骨格を導入する合成ブロックとしても有用であることを示している。
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Research Products
(3 results)