2004 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄による立体およびcaptodative効果を利用したラジカル環化反応の新展開
Project/Area Number |
16550041
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上村 明男 山口大学, 工学部, 教授 (30194971)
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Keywords | ラジカル環化 / endo / exo選択性 / ネオフィル転位 / 反応速度 / 立体障害 |
Research Abstract |
ラジカル環化における7-endo/6-exo選択性の向上の基礎的なデータの蓄積のために、選択性の濃度依存性についての検討を行った。α-クロルアクリルアミドへのラジカル環化の位置選択性は、反応を行う濃度に大きく依存し、Bu_3SnHをゆっくり滴下する条件、すなわちBu_3SnH濃度を10^<-4>M程度にした場合は90/10以上の選択性で7-endo生成物を与えるのに対して、Bu_3SnH濃度が10^<-2>Mあるいは10^<-1>Mのような濃い条件で反応させると7-endo選択性は徐々に低下し、0.3Mのとき7-endo/6-exo比が55/45まで変化した。一方これらの条件では位置選択性は反応時間によって変化しなかったので、観測された選択性の変化はこの系におけるラジカル環化の本質的な選択性の変化であることが示唆された。この濃度による選択性の変化はメタクリルアミドへのラジカル環化でも同様に観測され、以上のことから、この系における7-endo生成物の生成パスとして、従来考えてきたα位の立体障害によるβ位への直接的な7-endo環化パスに加えて、6-exo環化したあと生じるラジカルによるネオフィル転位によるパスも無視できないことが明らかとなった。そして現在までの予備的な検討の結果、ネオフィル転位はラジカルがBu_3SnHから水素を引き抜く速度に比べて約10^<-2>程度の速度であり、また転位そのものは不可逆で6-exoラジカルから7-endoラジカルを与える方向にのみ進行していることが強く示唆された。以上の結果を日本化学会春季年会に報告した。現在この速度論的検討を進め、この系におけるCaptodative効果の位置づけに関して知見を得る努力を行っているところである。
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