2004 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性が異なるアミノ酸水溶液中の分子間水素結合構造
Project/Area Number |
16550049
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
亀田 恭男 山形大学, 理学部, 教授 (60202024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
天羽 優子 山形大学, 理学部, 助教授 (20363038)
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Keywords | 光学活性 / アラニン分子 / 中性子回折 / 同位体置換法 / 分子間水素結合 / 部分構造因子 / X線回折 / 部分分布関数 |
Research Abstract |
天然に存在するアミノ酸は、その殆どがL-体である。D-体およびL-体アミノ酸分子自体の安定性は同一であるが、濃厚な溶液中では、DL-ラセミ体を含む場合と、L-体のみを含む場合では溶液内の分子間水素結合に何らかの差異が観測されるのではないかと考えられるが、未だにこれを確認する研究はなされていない。 本研究では、光学活性の異なるアミノ酸を含む水溶液中における分子間水素結合構造を明らかにする目的で、以下の実験を実施した。 1.置換可能な水素原子についてH/D同位体分率が異なる6種類の2.5mol%DL-およびL-アラニン水溶液に対して中性子回折実験を行った。日本原子力研究所JRR-3M炉に設置されている東京大学物性研究所4G(GPTAS)分光器を使用した。96.1%Dを含むDL-およびL-アラニン重水溶液について観測された散乱断面積の差Δ(Q)には統計誤差を超えて有意な差が見られた。Δ(Q)のフーリエ変換から得られた分布関数Δg(r)r〜2Å付近には負のピークが観測された。96.1%Dを含む同じ試料については、高エネルギー加速器研究機構に設置されているHIT-II分光器で飛行時間法を用いた中性子回折実験を実施した。HIT-II分光器から得られたDL-およびL-アラニン重水溶液に対する散乱断面積の差は、全く測定原理の異なる4G分光器から得られたデータと良く一致した。H/D同位体分率が異なる試料から4Gを用いて得られたデータを使い、DL-アラニン水溶液中の分子間部分構造因子および部分分布関数を得ることができた。部分構造因子の最小二乗法解析結果および、HIT-II分光器から得られたΔ(Q)の解析結果を比較したところ、DL-アラニン水溶液中における分子間水素結合はL-アラニン水溶液に比較して約2%程弱いことが実験から直接確かめる事ができた。 2.2.5mol%DL-およびL-アラニン重水溶液に対して、X線回折実験を実施した。データを解析した結果、分子間最近接水素結合0-0距離であるr〜2.8Å付近に約2%程の差が観測され、上述の中性子回折実験と矛盾のない結果が得られた。X線回折実験については、さらに良好な統計制度を得るためにデータ収集を継続している。
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Research Products
(4 results)