2004 Fiscal Year Annual Research Report
テンプレート反応を利用した半球状バナジウム酸化物分子の構築反応
Project/Area Number |
16550051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 宜仁 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (10231531)
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Keywords | 金属酸化物 / バナジン酸 / 酸化物クラスター / ポリ酸 / 金属多核錯体 |
Research Abstract |
伝導性物質や磁石など代表的な機能性物質である金属酸化物は,磁性や超伝導の最も優秀な記録を持ち,代表的な不均一触媒の一つである。しかし,酸化物の構造制御は難しく,分子配列を有機化学のように改良できるよう,合成手法を開発する必要がある。酸化物を金属に対する配位子として用い,その配位形態を調べ,すべて無機化合物からなる完全無機配位子を金属に配位させる。この目的に最適な環状構造を持つメタバナジン酸はリン酸のように縮合してさまざまな環状構造を取る可能性がある。そこで,テンプレートとしての金属塩を加え,環員数を酸縮合により拡大し全無機配位子による酸化物の構造制御を試みた。 (Bu_4N)[V0_3]溶液のESI-MSスペクトルを調べると,主に[V_3O_9]^<3->3員環および[V_4O_<12>]^<4->の4員環のスペクトルが得られ,大環状ユニットは観察されない。この溶液にさまざまな金属塩を加えると,そのルイス酸性のため縮合が進行し大きな環状酸化物[V0_3]_n^<n->が生成する。Pd^<2+>との反応では6員環が形成されPdは平面4配位構造をとる。環状に配列した6個のバナジウム原子の配置はボート型であり,頂点部分のバナジウムは二個の末端酸素を持つ。そのため,お椀型をしている。NMRからこの骨格は溶液中で安定である。Cu^<2+>との反応では8員環が形成し,銅はゆがんだ4配位構造で上下に二個の銅が環の中央に存在する。Ni^<2+>では加水分解によってdi-μ-hydroxo二核錯体が形成し,残りの8個の配位座がデカバナデート環からのオキソ基により配位され,その上下にNi^<2+>(H_2O)_3錯体がキャップした構造をしている。銅およびニッケル錯体は反強磁性相互作用をしている。有機溶媒中で安定なオキソバナデートの6〜10員環の大環状配位子が配位した錯体を形成する。銅錯体ではシアン化物イオンによる脱テンプレート金属反応が可能である。四面体型のVO_4骨格はVO_5型へと骨格変換がおきやすいため,塩化物イオンを共存させるとVO_5からなる半球状のデカバナデート[V_<12>O_<32>(Cl)]^<3->へと変換を新たに発見した。
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Research Products
(1 results)