Research Abstract |
超伝導,磁性,半導体,触媒能など現代文明を支えるハイテク化合物の多くに酸化物が用いられている。最高の性質を求めると酸化物にたどり着き,その分子レベルでの理解が重要となる。しかし,この基本的な化合物を分子として合成することは意外にも難しく,前人未踏の世界が広がっている。本研究では,ルイス酸であるさまざまな金属イオンとの反応により,バナジウムオキソ酸からポリ酸といわれるオリゴマー酸化物分子を形成し,その結果,酸化物イオンが金属イオンに配位した完全無機錯体の合成展開を行っている。 (Bu_4N)[VO_3]溶液にさまざまな金属塩を加えると,そのルイス酸性によりバナジン酸の縮合反応が進行し,クラウンエーテルと似た環状酸化物[VO_3]_n^<n->イオンが生成する。これまでに,Co(II), Ni(II), Cu(II), Zn(II)イオンとの反応において,さまざまな環員数nの大環状無機錯体[M_1(VO_3)_n]^<m->の合成に成功した。その結果,環状ポリオキソバナデートが,クラウンエーテルのように金属に配位した,無機配位子による配位化学を新たに創設できた。また,環状無機錯体から,金属を取り除くとディスク状の酸化物骨格が残され,そこに,テンプレート存在下に縮合反応を行わせると,環状酸化物を入り口にしたお椀型のクラスターに骨格変換される。さらに,DNA二重らせんに類似した,バナジウムリボンの二重鎖からなる無機不斉分子の合成に新たに成功した。これらの研究成果はボストンで開かれた234th ACS National Meeting (2007.8)のポリオキソメタレートのセッション(Organizer: Craig Hill)において報告した。
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