2005 Fiscal Year Annual Research Report
複素環補酵素-遷移金属錯体におけるプロトン共役電子移動とその制御
Project/Area Number |
16550057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小島 隆彦 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20264012)
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Keywords | 複素環補酵素 / プテリン / ルテニウム錯体 / Tris(2-pyridylmethyl)amino / プロトン共役電子移動 / プテリンラジカル / 結晶構造解析 / 水素結合 |
Research Abstract |
著者は本研究に先立って、トリス(2-ピリジルメチル)アミン(TPA)を補助配位子とし、N,N-ジメチルアミノ基を有するN,N-ジメチルアミノ-6,7-ジメチルプテリン(Hdmdmp)を配位子とするルテニウム錯体の合成と、プロトン共役電子移動(PCET)を含むキャラクタリゼーションを行った。本研究では、プテリン補酵素の2位アミノ基の役割を明らかにするため、天然のプテリン補酵素と同様に2-位にアミノ基を有する、6,7-ジメチルプテリン(H_2dmp)を配位子とする新規ルテニウム-プテリン-TPA錯体を合成した。そして、その結晶構造解析、分光化学的性質、酸化還元挙動、特にプロトン共役電子移動についての研究を行った。 [Ru(dmp)(TPA)]C10_4は、結晶中で2位アミノ基とピラジン8位窒素との間の分子間水素結合により2量体化していた。このことは、ピラジン8位窒素の塩基性の高さを物語っており、ピラジン環におけるPCET挙動の駆動力としてそのプロトン受容性の重要性が示唆された。このことは、PCET中間体のラジカル種のESRスペクトルの解析結果とよい一致を示している。本研究の成果として以下の3点が挙げられる:1)天然プテリンの構造に近い、2位アミノ基を有するプテリン誘導体を配位子とするルテニウム錯体を合成し、その結晶構造を明らかにした;2)2位アミノ基への水素結合が、プテリン環のプロトン受容性を増大させ、酸化還元挙動の可逆性を向上させることを見出した;3)2位アミノ基の存在は、PCETの円滑な進行に重大な影響を及ぼすことを明らかにした。 今後は、これらの成果に基づいて、プテリンの酸化還元挙動及び電子状態に関して、水素結合やπ-π相互作用が及ぼす影響に関して総括的に議論し、生体内でのプテリン類の反応性制御機構について明らかにしていく予定である。
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Research Products
(10 results)