Research Abstract |
ベンゾ-15-クラウン-5(B15C5)を認識部位に持つ蛍光プローブをγ-シクロデキストリン(γ-CyD)の包接化合物として水中に可溶化すると,バルク溶液中とは全く異なる応答が起こる。プローブ分子のK^+イオンに対する2:1錯生成定数は水中で3.8x10^9M^<-2>と算出され,これはメタノール中で観察されるB15C5の値(1.4x10^6M^<-2>)と比べて1000倍も高い値であった。 そこで本研究では,これらの応答因子を解明するために,アルキル鎖長の異なるB15C5型アゾプローブCn-Az(n=1,2,4)を新規合成し,γ-CyD包接錯体のアルカリ金属イオン認識挙動に及ぼすプローブ構造の効果を詳細に検討した。Cn-Az/γ-CyD複合体の0.10Mアルカリ金属塩存在下での応答挙動を調べた結果,紫外・可視吸収スペクトル変化では,C1-Az、C2-Az、C4-AzいずれもK^+イオン選択性を示す短波長シフトが見られた。一方,円二色性スペクトルでは大きな違いが現れ,C1-AzとC2-Azを比較すると,γ-CyDへの包接能の増大に伴って,K^+イオンに選択的な強い円二色性スペクトル変化が現れることが分かった。しかし,より鎖長の長いC4-Azでは,円二色性スペクトルのK^+イオンに対する応答は全く見られず,テトラメチルアンモニウム(TMA^+)イオン存在下で異常に大やな円二色性スペクトル応答が起こることが分かった。このような紫外・可視吸収スペクトルと円二色性スペクトルの応答の違いは,誘起円二色性スペクトル応答が,シクロデキストリンとアゾプローブの相対的な位置の変化に強く依存する結果であり,特にC4-Azの応答結果は,異なる包接錯体構造が生成しているためと考えられる。 以上のように,シクロデキストリン複合体センサーの応答は,プローブのアルキル鎖長によって大きな影響を受けることが明らかとなった。また,C4-Azについてはγ-CyDが存在しない条件でもK^+イオン選択的な応答を示すことを見出した。これは,水中でアルカリ金属塩に応答する新しい自己会合型の超分子試薬として期待できる現象である。
|