2004 Fiscal Year Annual Research Report
メタセシス重合によるキラル高分子・超分子の合成と応用に関する研究
Project/Area Number |
16550111
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鬼村 謙二郎 山口大学, 工学部, 助教授 (90284265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 勉 山口大学, 工学部, 教授 (30091169)
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Keywords | メタセシス重合 / キラル / 高分子 / 超分子 / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
ルテニウム触媒を用いた開環メタセシス重合(以下ROMP)の報告例には、ブロック共重合体の合成や反応性基を主鎖に持つポリマーの合成などがある。しかしいずれの場合もノルボルネン型あるいはシクロオクタテトラエンといった、環構造に大きな歪みを含むモノマーや中員環化合物に限られており、比較的安定とされている5あるいは6員環のROMPではオリゴマーしか得られていない。本研究ではシクロヘキセン環でも歪みを持たせることで、ROMPが優先的に進行すると考え、シクロヘキセン環に平面構造の5員環イミドが隣接した(1R,2R)-N-ベンジルテトラヒドロフタルイミド(BnTPI)のROMPを行った。ルテニウム触媒には1st Grubbs触媒を用いて重合を行い、モノマーの重合性および構造について検討した。光学活性なBnTPIの合成は安価なテトラヒドロフタル酸無水物からcis-シクロヘキセン-1,2-ジメチルエステルに誘導し、Pig liver esterase (PLE)を用いた速度論的光学分割によりcis-シクロヘキセン-1-モノメチルエステル-2-カルボン酸を得た。これのエステル基の立体反転、アミンとの反応を経て(1R,2R)-BnTPIを合成した。(1R,2R)-BnTPIの開環メタセシス重合性についてトルエン中、110℃、1st Grubbs触媒存在下で検討を行った。50〜82%の収率でpoly(trans-BnTPI)が得られ、そのポリマーのGPC測定結果からポリスチレン換算で数平均分子量が2.3万でおよそ90量体であることがわかった。またポリマーの比旋光度[α]_<435>は+20.2゜〜+52.0゜を示し、モノマーの負の旋光性([α]_<435>=-61.5゜)から正の旋光性へと反転した。更に旋光検出器を装着したGPCクロマトグラムでは各分子量領域で紫外線検出器とそれぞれ対応していた。円二色性(CD)スペクトルではモノマーとポリマーでは大きく変化していたことから、ポリマーの旋光性の変化は主鎖のキラリティーと高次構造に起因したものと結論づけた。
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