2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16550112
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
比江島 俊浩 東京工芸大学, 工学部, 助教授 (30288112)
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Keywords | 鎖分子 / 二量体化合物 / PVT解析 / 分子間相互作用エネルギー / 平均場近似 / 振動分光解析 / DFT解析 / 配向秩序度 |
Research Abstract |
本研究課題の骨子でも、「異方性場に固有の鎖分子のコンホメーションと配向度に依存した分子間相互作用エネルギーとの関連」を明らかにするために、主に以下の3項目について研究を推進した。 1.二量体化合物の^2H-NMR及びX線測定による配向秩序解析 本年度、我々はジエチレングリコールとn-ペンタン鎖をスペーサーに導入したCN-φφ-OCH_2CH_2-X-CH_2CH_2O-φφ-CN[X=0(CBE2),CH_2(CBA5)]なる二量体化合物を合成し、偏光顕微鏡観察及び^2H-NMR、小角X線回折の測定結果から以下の結論を導き出すに至った。1)重水素核と隣接水素との双極子分裂幅から算出したメソゲンの配向秩序度(Szz)は、等方相(i)と液晶相(n)の相境界近傍でいずれも約Szz=0.35の値を示し、2)その温度特性はスペーサーの違いによらず両者で酷似していた。以上の結果から、ni転移におけるCBA5とCBE2の転移エンタルピーに大きな差はなく、転移温度の差(ΔTni)がスペーサーのコンホメーションエントロピーに起因していることを強く示唆している。一方、CBA5の小角X線測定の結果から、2θ=5.1°(17.3Å)近傍に非常に弱い回折シグナルが観測され、温度の低下に伴って低角側へシフトした。回折ピークの値は、O-C-C-C-C-C-O骨格のコンホメーションがtttttt, tgttgtを想定したときの両末端間距離(ca.24Åとca.21Å)に比べてかなり短い値である。液晶相という異方的な場において鎖分子は、分子の長軸と短軸の比(アスペクト比)によって規定された空間の中で許されるすべてのコンホメーションを形成しているものと推察される。 2.二量体化合物のDFT計算に基づく振動分光解析 CBE2のIRスペクトルの温度依存性から、ネマチック(n)相では特定の振動モードのみが直線性から大きく外れた高波数シフト(1138cm^<-1>)と低波数シフト(920cm^<-1>)を示し、その波数シフトの温度変化は^2H-NMR測定から算出したn相のメソゲンの配向秩序度の温度特性と類似していることを見出した。DFT[B3LYP/6-31G(d)]計算に基づく振動数解析から、これらの振動モードは、それぞれ鎖分子中央のC-O-C逆対称伸縮振動とはさみ変角振動に帰属された。分子の重心の位置に関連する分子内振動と巨視的な配向秩序度との選択的なカップリングに存在を指摘した。 3.関連するテーマとして、リオトロピック液晶相を発現するポリアミノ酸エステルの固体中で観測されるヘリックスセンス反転現象の可逆・不可逆性と温度変化に伴う単位セルあたりの密度の増減の関連性を見出した。
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Research Products
(2 results)