2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16550115
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西村 賢宣 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教授 (60218211)
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Keywords | ダブルパルス / スチルベン / フェニルアセチル / 蛍光スペクトル / 励起スペクトル / 分子内エネルギー移動 / 吸収スペクトル / 蛍光寿命 |
Research Abstract |
光励起状態における量子干渉実験を行うための試料について、その励起状態ダイナミクスに関して検討を行った。基本骨格として、スチルベンを用い、そのパラ位にフェニルアセチル基を対称的に導入し(p-G1)、さらに末端のフェニル基のメタ位にもフェニルアセチル基を導入した(p-G2)。この化合物の特徴として、p-G2の吸収スペクトルはp-G1とフェニルアセチル基の和となり、基底状態ではそれらの相互作用は小さいということを示す。一方、蛍光スペクトルはp-G1とp-G2で差はなく、蛍光状態はほぼ同一であることがわかった。これは既に報告されているジチアアントラセノファンと蛍光挙動が類似しており、それと同様に量子干渉が観測される化合物の候補になる可能性を示している。また、p-G2の蛍光励起スペクトルは、その吸収スペクトルとほぼ一致し、末端のフェニルアセチレン部の励起がp-G1と同じ蛍光状態へ移動していることが明らかになった。フェニルアセチレン部とp-G1はエネルギー的に離れているが、励起状態では強く相互作用しており、それが原因となって、エネルギー移動効率がほぼ100%になった可能性がある。また、フェルスター型の弱い双極子ー双極子相互作用が働いている可能性もあり、今後の実験で明らかにしていく予定である。 励起状態ダイナミクスを調べるために、ピコ秒の蛍光寿命測定を行った。p-G1部を励起して、p-G1とp-G2の励起緩和過程を比較した。いずれの試料においても、100 ps程度の立ち上がりと、700 ps程度の減衰が観測されたが、p-G2の方の時定数が小さくなっており、末端のフェニルアセチレン基と励起状態で相互作用していることが明らかになった。これはp-G2では、励起が末端にまで非局在化していることを示しており、クムレン型の共鳴構造が寄与していると推測された。今後、この試料を用いた量子干渉実験を検討している。
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Research Products
(3 results)