Research Abstract |
まず,申請者がFlavobacterium antarcticaのアルコールデヒドロゲナーゼ(Fla-ADH)に見出した本酵素の特異な亜鉛含有量について,原子吸光分析により定量した。本研究開始直後に,本酵素と同じファミリーに属する耐熱性Geobacillus stearothermophilus NCIMB 12403のADH(Gst-ADH)の立体構造が明らかにされたので,当初予定していたウマ肝臓由来のADHではなく,四次構造の等価なGst-ADHをリファレンスタンパク質として,用いることとした。まず,Gst-ADHをG.stearothermophilus NCIMB 12403から精製した。精製酵素標品を用いて,Fla-ADHとGst-ADHの活性に及ぼす反応温度の影響について検討した。最適反応温度は,Fla-ADHは70℃であり,一方Gst-ADHは,75℃であった。したがって,Fla-ADHは,耐冷微生物由来であるにもかかわらず,中等度好熱菌由来のGst-ADHとほぼ同等の耐熱性を示すことが明らかとなった。一方,両酵素の低温域での活性は,大きく異なった。Gst-ADHは,20℃以下の低温域では,ほとんど活性を示さないが,Fla-ADHは,最大活性の10%程度の活性を示した。活性化エネルギーは,Fla-ADHでは,37.5kJ/molとGst-ADH(47.9kJ/mol)に比べて低く,好冷微生物Moraxella sp.由来のADH, MorADH(37.0kJ/mol)とほぼ一致した。さらに,最適反応pHは,Fla-ADHとMorADHは,中性付近であり,一方Gst-ADHは,アルカリ域であった。これらの結果から,Fla-ADHは,MorADHと類似の,またGst-ADHとは異なるアミノ酸残基の関与する新たな反応機構の存在が示唆された。
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