Research Abstract |
4H-SiCは,従来から用いられているシリコンを基盤とするパワーデバイスに比べて,より高い電流密度,より高い電圧に対応できる,高効率なパワーデバイスへの応用が期待されている材料である.高品質なデバイスを安定的に生産するには,デバイス作製に至るまでのプロセス,例えば大面積ウエハの作製,高品質エビ膜の育成などの技術水準を上げていくことが重要である.ところが,現状においては,エビ膜の成長時に表面欠陥が導入されることがあり,表面欠陥に伴う結晶欠陥(3C構造などの多形や積層欠陥,転位)がデバイスの性能を著しく低下させることが問題になっている. 今年度は,引き続き,基板/エビ膜界面に存在する表面欠陥の起源を平面TEM法によって解析した. 基板/エビ膜界面における表面欠陥の起源は,直径0.1μm程度の粒子が何個か集合した微細な異物であった.制限視野回折,エネルギー分散X線分光測定,顕微ラマン分光測定をその粒子に対して行った結果,それらは正方晶ないしは斜方晶のジルコニア(ZrO_2)であることを同定した,これらのジルコニア粒子は,老朽化したエビ膜成長炉の断熱材から混入した可能性が高いと思われる.同様の異物粒子は,観察に成功した表面欠陥20個中19個において認められた. 上記の研究成果を応用物理学会の欧文誌Japanese Journal of Applied Physics誌に投稿し,論文が掲載された.今年度から,4H-SiC単結晶とレーザの相互作用を研究するために,フェムト秒レーザをSiC単結晶表面に照射することにより形成される「リップル構造」の断面TEM観察を開始した.リップル構造からは,既にラマン分光測定によりアモルファスが検出されていたが,TEM観察は,アモルファスがリップル表面の凹凸に沿うような形でほぼ同じ厚さ(〜50nm)で分布していることを明らかにした,この研究成果を,5月にウイーンで行われる国際会議(LPM2007)において口頭発表する.
|