2005 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線照射による選択的結合切断を利用した均一ドーピング法の開発
Project/Area Number |
16560021
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥平 幸司 千葉大学, 工学部, 助教授 (50202023)
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Keywords | 有機デバイス / ドーピング / 化学結合切断 / コインシデンス分光法 |
Research Abstract |
高い絶縁性を持ち、種々の機能性デバイスの材料として注目を浴びているテトラフルオロエチレン(PTFE)は、フッ素(F)内殻1s領域の軟X線を照射することにより、C-F結合の選択的結合切断が起こる。このC-F結合切断により、電子構造の変化が期待される。高効率のC-F結合切断には、結合切断機構の解明が重要である。本年度は、PTFEのオージェ電子-光イオンコインシデンス(AEPICO)スペクトルを測定し、結合切断機構に関する知見を得ることができた。内殻電子励起による結合切断機構として提唱されているオージェ電子刺激脱離によれば、内殻励起の後、オージェ緩和が起こりその後、化学結合切断、さらにイオン放出が起こるとされている。AEPICOスペクトルは、特定の運動エネルギーをもつオージェ電子と相関を持って放出されるイオンを測定する手法であり、オージェ緩和が結合に関与するのか、どのようなオージェ過程が結合切断に関与するのか知るのに非常に有効な手法である。本年度は、高エネルギー加速器研究機構、物質構造科学研究所、放射光研究施設(フォトンファクトリー)のBL13C、8Aを利用して、PTFE薄膜のF1s領域における、軟X線吸収スペクトル、共鳴励起オージェスペクトル、およびAEPICOスペクトルの測定を行った。F1s→σ(C-F)^*へ励起によるC-F結合切断は、終状態がσ(C-F(2p))^<-2>σ(C-F)^<*1>とする傍観型オージェ過程を経て起こっていることを見いだした。共鳴オージェスペクトルの測定から、このオージェ過程において、σ(C-F)^*に励起された電子の局在性が高いことが示された。この結果から、終状態がσ(C-F(2p))^<-2>σ(C-F)^<*1>をへることで、高効率のC-F結合切断が起こっていると考えられる。その他、ドーピングによる電子状態の変化を調べるため、PTFEに、真空紫外光を照射することによる、電子状態の変化を紫外光電子スペクトルを用いて明らかにした。
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Research Products
(3 results)