2006 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線照射による選択的結合切断を利用した均一ドーピング法の開発
Project/Area Number |
16560021
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥平 幸司 千葉大学, 工学部, 助教授 (50202023)
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Keywords | 有機デバイス / ドーピング / 化学結合切断 / コインシデンス分光法 |
Research Abstract |
フタロシアニンは、ホール伝導性を持ち有機デバイス用の材料として興味深い物質である。一方昨年度までの研究で、いくつかのフッ素系有機物は、Fls付近の波長の軟X線を照射すると、特定の励起波長(Fls→σ(C-F)^*)で、C-F結合の選択的結合切断が起こる事を明らかにしてきた。これらの結果から、フタロシアニンの水素をフッ素に置換した、フッ素化フタロシアニン(FPc)は、軟X線照射による選択的結合切断を利用したドーピングが期待できる物質と考えられる。本年度は、FPcおよび比較のためフタロシアニンの軟X線吸収スペクトル(NEXAFS)を測定し、非占有軌道の電子状態、および分子配向について研究を行った。実験は、高エネルギー加速器研究機構、物質構造科学研究所、放射光研究施設(フォトンファクトリー)のBL13c、8Aを利用して行った。NEXAFSの入射角依存性から異なる種類のsi基板(自然酸化膜および水素終端化)上に作成したFPc膜(膜厚50Å)では、分子は基板に比較的立った配向をしていることを見いだした。またNEXAFSスペクトルの解析から、FPc分子の非占有軌道に関する知見を得た。特にFls領域NEXAFSの第1吸収帯は、入射角依存性からもとめた対称性、密度汎関数法による理論計算との比較から、通常のπ系物質で予想されるようにπ^*への遷移ではなく、σ^*への遷移であることを明らかにした。 フッ素系高分子であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)は、軟X線照射により高分子主鎖に2重結合が導入されることから、電子構造が大きく変化し、光照射によるドーピングが起こる可能性がある物質である。本年度はFls領域の軟X線を照射し、PVDFのX線光電子スペクトルの変化から、電子構造の変化を明らかにした。軟X線を照射することにより、C-F結合の解離とそれに伴うF原子の減少がみられた。さらに、XPSの各ピークが、照射によりシフトしていることを見いだした。これは、フェルミ面付近に新たな孤立準位が表れたことにより、各準位がシフトしたと考えられる。これらの結果は、PVDFで軟X線照射によるドーピングが起こっている可能性を示唆したものである。
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Research Products
(3 results)