2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16560046
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
金子 敏明 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40158853)
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Keywords | クラスターイオン / エネルギー損失 / 電子励起 / 水素クラスター / 中性化収率 / 炭素薄膜 |
Research Abstract |
複数原子イオンが固体薄膜を通過したときの粒子群の空間的な変形と電子励起に伴うエネルギー付与について理論的に調べた。水素クラスターイオンH_n^+のエネルギー損失量ΔE(n)、および、同速の陽子のそれΔE(1)を「波束モデル」に基づいて評価した。その結果、1核子あたり約60keV以上のエネルギーでは、エネルギー損失比R≡ΔE(n)/(n×ΔE(1))は1より大きく、正のクラスター効果が現れることがわかった。これは、実験データとよい一致を見た。ここでは、すべての粒子は陽子であると仮定している。一方、これよりも低いエネルギーに対しても、同じ仮定のもとで計算すると、Rの値はエネルギーの減少とともに小さくなるものの、依然として1より大きな値であった。これは、実験データとは矛盾する。そこで、この不一致は束縛電子の存在が原因ではないかと考えて,束縛電子数を1-2個と仮定して再計算した結果、実験データをほぼ説明できるRの値を得た。また、水素クラスターイオンの荷電比率に関しては、粒子数nの増加とともに1陽子あたりの中性化収率が増加し、n=7程度で飽和するという「クラスター効果」が報告されている。この問題に対して、筆者らが提案した流体モデルによる統計理論を適用することによってほぼ解明できた。さらに,炭素クラスターC60標的を、150keV以上のエネルギーのプロトンで電離したときのm重電離断面積(m=1,2)を調べた。われわれが最近開発した理論的方法によって解析した結果、陽子の進行方向とC60内の原子の配向との相関が電離断面積に強く現れること、および、m重電離断面積の計算値は実験値とほぼ一致すること、がわかった。なお、従来の解析では、フィッティング・パラメータを含んでいたが、我々の理論式にはそれが現れないことを強調しておきたい。
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Research Products
(4 results)