Research Abstract |
腐食環境におけるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の応力腐食割れ機構を解明するため,き裂進展を抑制する役割を持つガラス繊維に着目して研究を行った.まず,Eガラス繊維単繊維の引っ張り試験を行い,強度を評価するワイブル係数を求めた.このEガラス繊維を50℃の純水中に浸漬し,100時間と168時間後における繊維強度を測定した.この結果,水環境下において強度が低下することが確認された.また,100時間と168時間の結果を比較すると,強度低下に下限界が存在することが確認された. このような強度低下について考えると,まずガラス繊維の破断は繊維表面に存在する初期欠陥から破断すると考えられることから,水環境下においてこの初期欠陥の大きさが増加したことが予測される.そこで,表面形状の変化を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察し,表面粗さを測定した.この結果,表面粗さは浸漬時間にしたがって増加することが確認され,初期欠陥寸法の増加が水環境下における強度低下の原因となると予測される. 次に,単繊維の強度分布を用いて,Eガラス繊維束(2000本)の強度の予測を行った.Eガラス繊維の強度は単繊維の結果からわかるように,強度分布にばらつきがあることからワイブル係数を用いて表される.したがって,繊維束に引張り負荷を与えた場合には弱い繊維から順に破断していくことになる.そこでガラス繊維束に引張り負荷を与えたときに生じる破断数の増加はワイブル係数により表されると仮定し,数値計算により繊維束の強度を求めた.また,純水中における繊維束の強度低下を同様に数値計算により求めたところ,実験結果とよい一致を得た.したがって,単繊維の強度分布と水中における強度低下を調査することで,ガラス繊維束の強度低下も予測されることが示された.
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