Research Abstract |
本年度はとくに,多結晶の変形挙動に及ぼす結晶粒集団的な多体効果を明らかにすることを目的に,単相および二相の多結晶金属材料の有限要素解析を行った.結晶粒の集合体スケールにおける不均質な変形挙動に対し,その特徴および結晶粒間の相互作用である遠隔効果の影響領域について詳細に検討を加えている.得られた主な結果は以下の通りである. 結晶粒数の増加に伴い,巨視的変形応答は一定値に収束するが.各結晶粒の変形応答に大きな変動が見られ,不均質変形が顕著になるが,この傾向は硬質粒を含むことでより顕著になることが明らかとなった.また,その不均質性は硬質粒の分布形態により大きく異なり,応力場の不均質性は主として静水圧応力に反映される.さらに静水圧応力には,同じ結晶方位を持つ結晶粒においても,周囲の結晶粒との相対的な位置関係の変化によりその挙動に大きな差異が生じ,結晶粒の集団挙動を検討する上で,重要な因子の一つであることが示された.また,多結晶体中の個々の結晶粒の変形は遠方に存在する結晶粒群からも影響を受け,その影響領域は結晶粒数にして数百個にも及ぶ.さらに,硬質粒を含むことで影響領域はより大きくなり,強度比や体積分率の変化による材料の不均質性に依存する.これより,多結晶材の変形挙動の評価には,ユニットセル内に最低でも数百個の結晶粒数が必要であり,また,巨視的変形応答のみではなく,微視領域の不均質変形についても評価することが本質的に重要であることを示した.以上に加えて,変形の進行により多結晶体中に縦断して形成される不均質変形構造についても検討を加えている.同不均質構造は,大きくは応力を支持する応力支持構造と塑性変形を担い変形を伝達する変形伝達構造に分けられる.前者は変形初期段階の弾性変形時から形成され,それに遅れて後者が形成される.とくに二相材では,引張方向に配向した硬質粒を繋ぐように応力支持構造が形成され,単相材よりも早期に構造形成が始まる.また変形伝達構造は母相の軟質粒で形成される.以上の知見に基づき,硬質粒の体積分率や分布形態,強度比を変化させることで両不均質構造の形成形態が制御可能であることを指揃した.
|