2006 Fiscal Year Annual Research Report
場の理論に基づくマルチスケール多結晶塑性モデリングに関する研究
Project/Area Number |
16560084
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長谷部 忠司 神戸大学, 工学部, 助教授 (20237994)
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Keywords | 場の理論 / 結晶塑性 / マルチスケールモデリング / ひずみ勾配塑性 / 転位 / 結晶塑性論 / 不適合度 |
Research Abstract |
本年度はとくに,連続体力学モデルで記述が可能な幾何学セル(一般にGNDと呼ばれているものに対応)の数理モデル構築を目指し,微分幾何学的場の理論における曲率テンソルから得られる不適合度テンソルの詳細なモデル化を行った.得られた主な結果は以下の通りである. 不適合度テンソルに基づくひずみ勾配項を定式化し,結晶塑性構成式に導入することで,連続体力学的解析結果からスケールを遡って転位配列に関する情報を評価することを試みた.その結果,例えば結晶粒内に,その結晶方位に依存した変調構造が形成されることを見出した.ここでは解析中に出算出されたマクロな塑性ひずみテンソルから不適合度テンソルを求め,それを各すべり系に分解(不適合度項と呼ぶ)することで,微視的構成式における硬化発展モデルに考慮した.不適合度項に現れる正負に跨る変調分布(曲率の正負に対応する符号を考慮している)が,応力およびひずみ分布にも反映された結果である.有効セルサイズ分布にも反映され,本モデルの範疇では,最終的に力学セルサイズの空間分布が求まることになる.例えば,小さい力学セルがバンド状に分布している場合,これはバンド幅に応じてマイクロバンドやマトリクスバンドに相当すると解釈することができる.ただし,物理的に妥当な分解方法には少なくとも3種類考えられ,分解方向により変調構造のパターンが異なる点については,今後更なる検討が必要である.また,不適合度テンソルを純粋な変形部分と回転部分に分離し,各々に対する不適合度を評価できるようにした.さらにFrankベクトルを考慮して純回転部分をさらに分解することで,回位(or転傾:disclination)の3種類を具体的に評価することが可能となった.これにより,例えば下部組織形成に伴うミスオリエンテーションの発展や,最終的には結晶粒階構造の連続体近似モデルの定式化も可能となる.シミュレーションでは,不適合度項の発展が変形の後期に純変形部分と純回伝部分に分配される(加速される)様子が示された.さらに将来的な応用として,ラスマルテンサイト組織などの高密度転位密度組織や変形双晶の連続体近似モデルなど,広い範囲が考えられるが,その予備検討についても行った.
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Research Products
(3 results)