Research Abstract |
SiC(炭化ケイ素,シリコンカーバイド)は,耐熱性をはじめとする優れた機械的特性をもつため,X線ミラーなどの機械構造部材として有用性が高い.しかし,高硬度ゆえに除去加工に代表される従来の機械的加工法による高精度形状創成は困難な状況である.そこで,基板上における分子の自律的整列現象(エピタキシャル成長)を利用する付着成長(成膜)技術であるMBE(分子線エピタキシ)法を応用し,単結晶Si基板上に単結晶SiC薄膜を作製することを試みた.従来,適切な条件下においては,単結晶Si基板上にナノメートル・オーダの精度にいたる高純度単結晶SiC平滑面が直径100mmの基板全体に均一に作製できることを明らかにしているが,このSiC面の実用化を考慮すると,表面粗さなどの表面性状をさらに高精度化し,適切に制御する必要があると考えられた.そこで,本研究では,単結晶Si基板上に,所望の良好なSiC面を得る作製条件を明らかにするために,作製条件が表面性状に及ぼす影響の実験的解明をはかった.すなわち,MBEで作製されるSiC面について,加工プロセスが表面性状に及ぼす影響を明確化するとともに,表面性状との関係を実験的に整理体系化し,SiC面の表面性状の高精度化法を明らかにすることを試みた.本年度は,(111),(100),(110)Si基板において,基板温度,炭化時間などの作製条件を変化させてSiC加工プロセスを施し,それぞれにおいて創成される面の幾何形状,組成および化学結合状態,結晶構造および結晶性,機械的特性などを解析し,加工プロセスが表面性状と界面に及ぼす影響の実験的解明をはかった.
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