Research Abstract |
最終年度である平成18年度は,これまでに開発してきた陰的なラグランジュ系の力学理論の洗練化を行ない,代表的なマルチボディシステムである剛体系に特徴的に現れる,群の作用による対称性と簡約化について考察した.特に,配位空間がリー群で与えられ,さらに,非ホロノミック拘束を受ける場合についての理論の構築を行ない,マルチボディダイナミクスの統一的手法の基礎的な枠組みの構成をした.具体的には,まず,リー群によって与えられた配位空間の余接バンドル上の正準ディラック構造を考え,その簡約化の方法を開発した.これにより,従来のリー・ポアソン構造や余随伴軌道上のシンプレクティック構造を包含する簡約化の理論の構築に成功した.この簡約化法をリー・ディラック簡約と名付け,それに基づいて陰的なラグランジュ系の対称性に関する考察を行ない,オイラー・ポアンカレ・ディラック簡約とそのハミルトン系のアナロジーである,リー・ポアソン・ディラック簡約の理論を提案した.さらに,これを非ホロノミック拘束系へ拡張することで,オイラー・ポアンカレ・サスロフ簡約と,その双対なリー・ポアソン・サスロフ簡約の理論を構築することに成功した.これらの簡約化方法によって,剛体系に特徴的に現れるオイラー・ポアンカレ方程式とリー・ポアソン方程式の陰的な形式を与えるだけでなく,非ホロノミックな拘束を受ける場合の陰的なオイラー・ポアンカレ・サスロフ方程式とリー・ポアソン・サスロフ方程式の導出が可能となった. 本研究の成果として,既に,基礎理論については,AMS-SIAMや京都大学数理解析研究所の力学系の研究会で報告をしており,一部は,Journal of Geometry and Physicsなどの論文誌に掲載されている.また,他にも簡約化に関する論文を投稿中である.
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