2004 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性/反強磁性交換結合積層膜の開発とマイクロ波磁気デバイスへの適用に関する研究
Project/Area Number |
16560271
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 敏郎 信州大学, 工学部, 教授 (50283239)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 義正 信州大学, 工学部, 教授 (30362099)
山沢 清人 信州大学, 工学部, 教授 (50005477)
|
Keywords | マイクロ波磁気デバイス / 強磁性共鳴 / 強磁性 / 反強磁性交換結合 / FeSi / MnIr |
Research Abstract |
本研究は、マイクロ波磁気デバイス用の新規磁性薄膜材料に関するものであり、高磁化強磁性薄膜/反強磁性薄膜交換結合による交換異方性を利用することで、強磁性共鳴周波数の高周波化ならびに高い透磁率を両立するマイクロ波帯用磁性薄膜材料を実現しようとするものであり、最終的には、デバイスへの適用可能性をも視野に入れている。 平成16年度は、これまでに検討を進めてきたFeSi/MnIr系交換結合膜の特性改善に的を絞って検討を行った。以下に得られた結果を要約して示す。 (1)Ru下地層によるFeSi膜の特性改善 強磁性/反強磁性交換結合は、界面の状態に著しく依存することが知られているが、強磁性層の磁化ベクトルの空間的な揺らぎ(大きさ、方向)も大きく影響するものと考えられ、強磁性層の磁化ベクトルの分散を抑制することが良好な交換結合を発現するキーになるものと考えている。このためには、FeSi膜に対して、一軸異方性分散の大幅な抑制とともに保磁力の大幅な低減が必要である。この目的のために、FeSi膜の下地層として極薄(1nm)Ru膜を採用して種々の検討を行った結果、保磁力が数十Oeから数Oeに激減するとともに、明瞭な一軸異方性が発現することが明らかになった。Ru下地層は、FeSi膜の結晶粒の微細化に寄与するとともに、表面凹凸が1/5程度に改善することが確認されている。 (2)Ru下地層によるFeSi/MnIr交喚結合膜の特性改善 上記方法をFeSi/MnIr交換結合膜に対して適用し、Ru下地による特性改善の効果を調べた。その結果、FeSi膜の場合と同様に、Ru下地の採用によってFeSi/MnIr交換結合膜の保磁力が大幅に低下するとともに、交換結合エネルギーが約50%増大することが明らかになった。1nm厚Ru下地層を有するFeSi(50nm)/MnIr(10nm)二層膜の複素透磁率を評価した結果、交換バイアスによる強磁性共鳴周波数の高周波側へのシフトとともに、半値幅の狭い強磁性共鳴吸収が観測され、本方法が交換結合による一方向異方性の分散の抑制にも大きく寄与していることが示された。 平成17年度は、Ru下地層を有するFeSi/MnIr多層膜を作製し、その効果を確認するととも、さらに特性を改善するための膜構造についても検討を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)