Research Abstract |
本研究では,可視光通信をシーケンシに基づく通信方式とみなし,その基礎的検討を行なうことで,可視光通信の基盤技術の確立を図ることを目的にしている.可視光通信とは,天井や壁に設置された照明を利用した通信である.ここで,照明にはLEDを用い,LEDを高速に点滅(光強度変調)することで情報伝送を行なう. 本年度は,具体的な応用例として,高度交通システム(ITS)を考えて検討した.これは,現在,普及しつつあるLED信号機に着目し,そのLEDを用いて情報伝送を行なう方式である.当初想定していた室内での可視光通信と異なり,移動する車輌で信号受信を行なわなければならない.また,LED信号機を遠距離(100m)でも認識する必要がある.以上の観点から,受信機としてフォトダイオードで無く,カメラを用いることを考え,検討を進めた.結果として,次の点が明らかになった. 1)通信距離に応じて,通信路が画像の空間周波数のカットオフが変化するLPFとしてモデル化できること. 2)以上の通信路特徴を活かしたウェーブレット変換に基づく新しい階層的符号化方式が有効であること. ここで新たに提案した新しい階層的符号化方式は,遠距離では画像空間周波数のうち,低周波領域の信号は信頼性高く受信できるのに対し,高周波領域の信号のそれはそれ程高くない.一方,近距離では,低周波だけでは無く高周波領域の信号も受信可能となる.これより,重要な情報は低周波領域に,付加情報は高周波領域を利用して伝送することで階層的伝送が実現できる.また,低あるいは高周波へのデータの振り分けはウェーブレット変換で実現できる.本提案方式の有効性は,シミュレーションのみで無く,簡単な試作器を制作し,その有効性を確認しており,既に発表済みであり,独創的はユニークな研究として高い評価を受けた.また,その結果は,論文として投稿予定である.
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