Research Abstract |
分散配置された多数のセンサーにおいて,ある発生信号系列に関する観測データが得られる場合を考える.このとき,これらの観測データが各地点で独立に情報圧縮されて情報統括局に送られ,そこで発生信号系列の復元が行なわれるという通信システムを考える.CEO(Chief Executive Officer)問題は,このような多端子通信システムにおける通信の品質と圧縮効率の関係を論じるものである.研究代表者は,数年前にGaussian CEO問題,即ち信号系列,及び観測データがともに多変量正規分布に従う場合のCEO問題を考察し,完全解を与えた.本研究では,CEO問題のある拡張を定式化し,多端子情報理論における基本的未解決問題を考察する際に,この問題が重要となることを明らかにした.また定式化された問題の秘密分散共有システムとしての側面を検討した. 複数の地点で発生する相関のあるデータを多端子通信路を介して多数の地点へ送り届けるシステムを考える.通信路の確率特性,情報源には一切仮定をおかない極めて一般の場合を考える.本研究では,これを2つの代表的な多端子通信路の場合に考察した.まず,複数の地点で相関を持って得られるデータを多重アクセス通信路を介して,一箇所の地点へ送り届ける多端子情報伝送システムに注目した.このシステムについて,信頼できる情報伝送が可能となるための必要十分条件を情報スペクトルと呼ばれるデータの生起確率の対数尤度に基づく情報量を用いて陽に与えた.また,複数の相関を持ったデータを一般放送型通信路を介して,複数の地点へ送り届ける多端子情報伝送システムに注目した.このシステムにおいて,信頼できる情報伝送が可能となるための必要十分条件を情報スペクトル的量を用いて陽に与えた. 情報セキュリティ,乱数可変に関連した研究として,可変長のコイン乱数列から固定長のターゲット乱数列を作り出すVF型乱数生成問題を考察した.この問題において,単純で効率のよい乱数生成法として知られている区間法の動作を表現する生成木の具体形を実数の記数法を用いて陽に与えた.さらに,得られた具体形を利用し,区間法の性能に関する従来結果よりもより精密な評価を得た.次に,カオスを呈する離散力学系の一つであるr進写像において写像の合成から得られる実数値列を閾値によって2値化した系列を考え,これをカオス2値系列と呼んだ.本研究ではカオス2値系列の生成過程が乱数生成問題に現れる木構造と類似の構造を持つことに注目し,カオス2値系列の統計量として系列に現れる1の個数の頻度を考え,この統計量の揺らぎを示す指数の陽な計算公式を与えた.
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