Research Abstract |
分散配置された多数のセンサーにおいて,ある発生信号系列に関する観測データが得られる場合を考える.このとき,これらの観測データが各地点で独立に情報圧縮されて情報統括局に送られ,そこで発生信号系列の復元が行なわれるという通信システムを考える.CEO(Chief Executive Officer)問題は,このような多端子通信システムにおける通信の品質と圧縮効率の関係を論じるものである.研究代表者は,1998年にGaussian CEO問題,即ち信号系列,及び観測データが多変量正規分布に従う場合のCEO問題を考察し,完全解を与えた.2005年のIEEE IT Transaction掲載の論文では,1998年に得た結果の拡張を行った.本研究では,2005年の結果の更なる拡張を行った.また,あるクラスの離散型CEO問題を考察し,通信の品質と圧縮効率の理論限界の上界と下界の具体形を得た.信号系列および観測データがいずれも多変量正規分布の場合のCEO問題は,ベクトル型CEO問題とよばれる.この問題に取り組み,通信の品質と圧縮効率の理論限界を表す領域を部分的に明らかにした.近年,センサネットワークとよばれる分野が,注目されている.センサネットワークと多端子情報理論との深い関係を明らかにし,上記の研究成果が,センサネットワークの基礎理論の構築における礎となることを明らかにした.送信者から受信者への情報伝送の際に,送信者と受信者の間に中継者が介在する通信路を中継通信路とよぶ.中継通信路における中継者が,通信の補助者だけでなく,盗聴者にもなりえる場合を考えることができる.2001年に,このような場合の中継通信路の安全性解析を行ったが,部分的な結果しか得られていなかった.本研究では,再びこの問題に取り組み,いくつかの場合について,完全解を得た.
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