Research Abstract |
本年度,本研究では次の3点についての結果を得た. 量子化データを用いたシステム同定 前年度より量子化された入出力データを用いたシステム同定問題に取り組んできた.これまでは,同定に用いる入出力信号の発生から最適量子化器の誤差評価に至るまで,全て確率的考えのもとに議論を進め,最適量子化器を得ていたが,本年度は誤差評価にhard boundを用いて,一部確定的評価を混合した最適量子化問題を考察し,その解を得た.この場合の最適量子化器は,基本的に指数関数的であるが,量子化される信号の原点近傍が粗いものとなり,安定化のための最適量子化器と,これまでの確率的アプローチによる最適量子化器とのハイブリッド型となることを示した. 通信容量制限下における適応制御 先行研究では,通信容量制限下における,既知の制御対象の安定化問題を考えてきた.しかし現実には制御対象の一部の情報が未知であることが普通であり,そのような状況下に対応する制御系設計の開発が求められている.このような考えのもと,前年度は線形離散時間系に対する量子化信号を用いた適応制御の設計法を開発した.本年度はさらに制御対象を非線形連続時間系に拡張し,制御対象の漸近安定性を保証する適応制御器および適応量子化器を得た.連続時間系を対象とする際に注意すべき点は,チャタリング現象の回避や解の一意性の保証であるが,2系統の適応量子化器を組み合わせる工夫により,これらの問題点を解決した. 通信容量制限下における制御性能解析 信号伝達におけるデータレートに制約のある制御系の安定化問題において,データレートの厳密な下限を達成する制御系についての具体的な提案がなされているが,その系は一般に複雑であり,安定化のみならず制御問題において実質的に意味のある制御性能問題について,どの程度の性能を有するのかという点については,これまで不明であった.ここではNair & Evansによって提案されている制御系の性能として,制御出力信号のL2ノルムをとり,その上界をデータレートの関数として与え,それらの間の関係について解析した.その結果,提案されている制御系が,L2ノルムの意味で必ずしも最適なものとは限らないことが示された.
|